- C 900話 ルビコン川のほとりにて 10 -
「聖櫃に会うのが?」
「会うというより、誰が手綱を握ってるのか」
ボクらがカリマンタン島で大騒ぎを起こした後から、聖櫃の主体となった行動が掻き消えたという。
まあ、ヴィヴィアンさんを泣かして、メルちゃんの救出と。
いろいろあって、聖櫃の本隊と追ってた者が合流したんだ。
隠すつもりはないけど、森の中に木を隠したようになってしまった。
ま、そういう事だ。
「そういう事なら、知らなくもない」
アリスさんとしては教える義理はない。
ぴんく☆ぱんさーを敵に回しても、戦争にはならないが。
ここの総長とは敵討ちみたいな立場になりたくはない。
ひと回りしても、勝てる気がしない。
「そんな事はないよ?」
あ?
「いや、キミで勝てなくても雇い主次第じゃないかな」
戦ってみたいと。
狂犬のハナ姉とか。
「いや、待ってくれよ。今、なんか悪寒が来た。訂正、ちょっと訂正する...相手がティラノサウルスみたいな獰猛な女の子は寄こしてくれるなよ!! これはお願いじゃない、命令だ!!!!!」
今、本気で怖がった?
「ちらっと思い出した女性に失礼だと思わないか? 恐竜と一緒にするのかよ」
「知らないよ、ボクの感覚の問題で。キミはそれを思い人に照会したんで、キミの方が失礼なんじゃないかな? たぶん、謝罪するなら今のうちだと思うよ」
で、えっと。
この人はボクらに会いたいのかな。
ラミアさんとリリィの姿がない――ふたりの漫才の最中にそっと、出たっぽい。
これは、あれだ。
ハナ姉のおかげかも知れない。
な~いす、ハナ姉。
◇
渡りをつける。
ウナちゃん似のファックスが印刷紙を吐き出した。
また、こんなもんを置いてどこかへ消えやがりました、よ。
「マルぅー!!」
工房の外までハナ姉が回覧板を持ってきた。
なんかの奇妙な病気だった、姉もすっかり元気になって――「今日も快便、快便! 本日のは茶色みのすっごい長いのにゅるんと出やがりました」――と、報告するようになったんだが。
ハナ姉が馬鹿になった。
ボクはそう思ってしまった。
「回覧板ーっ、ここに」
置くはずもなく。
扉をノックもなしに開けてくる。
すごいなあ、妹に配慮なしですか。
あ。
メルちゃんに剥がされそうなパンツの攻防が。
ボクの工房の中で行われ、せめぎ合いを義姉に見られたとこでござ~い。
あああああ!!!!
「よ!」
メルさんひと皮むけたね。
ハナ姉との気の合い方が、ね。
「そ、それは?!」
「おおよ、脱ぎかけのパンツだ。マルちゃんのひとり〇ッチ沁みつきだから貴重だと思うんだよ。どうだ、姉よ。パンツだけにいちまい噛んでみないか!?」
誘うな、誘うな。
てか、目が怖ええよ。
参加するな、すなよ~。