- C 898話 ルビコン川のほとりにて 8 -
ぴんく☆ぱんさーの総長はアリスさんをメンマっぽいステッキで小突いた。
「キミのとこの雇い主はどう?」
馴れ馴れしいなあって顔に出そうになった。
「あーいやいや。キミは漢だから唇は愚か、触りたくもない。ラミアちゃんにはボクの子を産んで欲しいと思うけど!! キミは感染させる方のキノコだろ? タケノコに駆逐させられてしまえ」
で、ステッキで小突いてる訳だが。
両手で顔を拭った。
少し冷静になりたかったし。
「何かあるのか?」
「思わせぶり...かもだが」
いあ。
東大陸サイドにも破壊工作の対象が?!
とは思いたくもない。
だが、観光だの遊びに来たのだと言うのも。
覆ってる手の端から総長を見る。
観察する。
彼女も見られてる事は分かってる――互いの綱引きだが。
ラミアにはちょっかいを止めない。
「義姉に構わないでください!!」
リリィが吠えた。
「おや? お姉ちゃんを盗られた気がして妬いちゃったかなあ?」
煽る煽る。
リリィが苦し紛れに毒を巻きかねない。
「おい!」
少女を護ろうと?
いあ、リリィの毒からアリスさん自身を守る為に動く。
で、だ。
「あ、キノコ派の方は近寄らないでください。わたしもキノコは少し、苦手なんです」
触感的にだが。
完全に否定はしてない。
孤児だったけども、その行為がなければ。
自身が生まれ落ちてなかった事くらいは理解してた。
ただ、孤児院長が擦りつけてきた記憶は、どこかに封印したいものであるし。
「っ話が進まん」
ラミア自身が総長の触手を振り解いた。
「破壊工作の具体的な」
指を立てて、チッチチチッチ...
総長はラミアさんでも、優しくない時がある。
「こんな壁の薄いところで言えると思う?」
皆が唾を飲み込む。
そんな音さえ聞こえた。
いや、ひとりだけ。
そうひとりだけは、ラミアさんが呑み込んだ唾を物欲しそうに見てて。
「ちょっと...」
「あーいあ、なんかごめん。さっきまで吸ってたんだけど、恋しくなって」
だから応答すな。
こっちの調子が狂う。
「防音の魔術は仕込み済み。ボクは手が早いよ~指も舌先もだけど。あーはいはい、黙ります~。そういう話じゃないんだよね、はいはい。城州王の坊ちゃんが聖櫃っていう連中から、狡賢い手段で入手した玩具に、魔女の弟子たちが大いに猛り狂っちゃったようでね」
総長の情報収集方法は謎だけど。
各方面を混乱させたようだ。
特に、404の母体は異常な状態だという。
ボクら東大陸側に傭兵契約が結ばれたのも、恐らくは。
どこかで警鐘が鳴らされてたからかもしれない。
「そこで、だ!」
はい、本題かな。
総長だけでこの地にはいないだろう。
「キミたちの何れかが聖櫃って連中と繋がってたりしないかい?」
ん?