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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2031/2365

- C 894話 ルビコン川のほとりにて 4 -

 アリスが帰ったラミアの執務室奥から、リリィが出てくる。

 額の汗を拭って、

「精霊炉のはなし」

 頷きながら義姉が背もたれに沈む。

 生きた心地がしない。

 甲蛾衆は怖い連中だって評判がある。

 いや、勝手にそう思い込んでたところは、ラミアにあった。


 ラミアはいつも。

 アリスとの対面では背に、大粒の汗を拭き出させている。

「怖かった」

 うんって声が続く。

「奥に控えてたのもバレてたっぽいね」


「毒は?」

 仕掛けてない。

 仕掛ける素振りさえ許してくれなかったと、思い込んでた。

 帰途のアリスさんからすれば「毒使いの子、思い留まってくれて助かったー」だ。



 娼館の上階が事務所になってるけど。

 その下階でちょっとした事故。

 いや、事件が。


 悪目立ちしている客があると。

 従業員のお姉さんたちから、苦情が舞い込む。

「経営もしないといけないとか、どんな罰ゲームよ?!」

 って、愚痴るのはラミアの癖になりつつある。

 苦情の主へ相対して。

「うむ、女店主とはまた乙なことだな。で、店主自らが酌致すのか?」

 ああ、なんか勘違いした客だって、ラミアは思ってしまった。

 第一印象で下種を演じる。

 そういう客だと思わせたら、バットを振り抜けば。

 勝手に思い込んでくれる。

娼館うちは一夜の楽園を切り売りする店です。申し訳ないですけど、お客様のような女の子に接待を求められる方でしたら、別のお店にどうぞ」

 って、腕を取って外へいざなおうとした。

 が、ラミアの腕をとって逆に躱されたとこ。


 惚けてたら、キスまで赦してた。

「え? ええ?!!!」

 濃厚なキス。

 舌が絡んで、唾液の交換をして。

 なんか吸われた気がした。

「ね、ねえさん!!!」

 下階に降りてきたリリィと下種な男と目が合う。

 ニタリとほほ笑んだような気がして、廊下の端まで飛び退いてた。

「ラミアよりも勘がいいな、少女キサマ

 リリィの傍らには警鐘だけを鳴らす“精霊”がある。

 王国のスパイ狩りの方じゃなくて――

「ふむ、お前も魔女か」

 ラミアだけでなく、妹たちにも見えない“精霊”が男には見えている。

 義姉の腰に腕を巻き。

 がっちりとホールドしたまま、ちゅばちゅば吸ってるトコで。

 時々、ちゅっぽんと息継ぎしてたり。

「泣かないで義姉ねえさん!!」

 今、助けるではない。

 励ますくらいしか出来ないんだけど。

 ラミアに危害を加える様子はないようだ。




 状況的にはもっとも娼館らしい、女店主と下種男の交際風景。

 ただ、なんて言うか。

 ラミアさん、可哀そう。

「口が~ 口が~」

 ふやけるんだって。

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