- C 883話 王国の行方 3 -
結論から言うと、生カキに当たった。
食中毒で船室から出ることが出来なかった。
ウナちゃんと、ハナ姉はトイレの中で半腐乱状態になってた。
魂だけが。
ボクの周りにあった模様。
身体も持ってきてよ。
えっと。
女王派の方々は、だ。
泉州王さんの就任を心待ちにしてた訳だけど。
ひと先ず、この貨客船の乗員は、下船したゴースト以外は療養が必須となったという。
も~。
なにやってんだよー。
◇
ゴーストシップと上手い事を言った、メルリヌスさんは映画の見過ぎだと思うけど。
インドアの鑑よろしく仮想世界でも、引き籠れるメンタルの...いや、とてつもなく面倒臭がりな性格に勝るクスリはない模様だ。
例えば、アレだ。
デスゲームで、率先して攻略に参加しなくてはならない状況にあっても。
彼女のような筋金入りのインドア派は――。
“はじまり”の街から出ることは無い。
ケツを蹴りだしても。
きっと、別の街で引き籠るのだと思う。
こういうトコはボクと違うんだよなあ。
さて、メルちゃんは洗濯物である筈のボクの肌着を与えておいて、だ。
病室に横たわる泉州王さんを、ボクは見舞いに行く。
グィネヴィアさんと、エサちゃんを伴い。
ハナ姉はトイレから未だ救出されてないっぽいので後回しだ。
「ややや?」
しょぼしょぼになった目が物語る。
生ガキの猛毒性を。
「なんか、初見さんが増えて?」
「初見か、パッと見て全体を見るなんて見どころがあるじゃないか!!」
グィネヴィアさんの誉め言葉。
横たわり、衰弱してなかったら“おいなり”さんを握られてたかもしれない。
病室でトレーニングしてた、アロガンスさんと接見した瞬間に握り。
『なんだ?! やせ我慢かよっ。ふにゃチンとか勘弁しろよ、もっと硬くしてからきやがれ!!!』
なんて殴り倒され、完治が長引かされた。
そんな実績が、グィネヴィアさんにはある。
だから...
「全体、をか。いあ~なんか期待外れで、、、面目ない」
真っ青な顔色で、口端に泡を吹いてる。
見たところポーションや、治癒魔法も効き目が薄いように感じられた。
そこまで憔悴しきって。
「あ、いあ、これは自己回復がデキ、て...ねえんだろ?」
グィネヴィアさん曰く。
この世界での魔法知識は、錬金術の台頭により減退。
衰退するほど行使者が居なくなったわけでも、マナが薄くなったわけではなく。
そもそも錬金術だって、マナを燃料に費やしているわけだから、魔法が無くなった訳ではない。
どっちかと言うと。
大量生産出来て、魔法使いなんて職業が成り立たなくなっただけの話。
しかし、そこに弊害が生まれた。
「というと?」
エサ子の教本めいた質問。
これに応えるグィネヴィアさんは、さながら教諭のような。
ような―― どこか既視感を感じる。