表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2018/2358

- C 881話 王国の行方 1 -

 ――ここは南洋王国の西方・エクスマウス沖。

 何もない海のど真ん中で、事件?いや、この場合は事故が起きた――。


 モニター艦として産声を上げた軽巡洋艦の艦尾構造物から火柱が昇った。

 続いて激しく揺れて、乾舷間際でも大爆発。

 南洋王国が放った“裁きの炎”は、南部方面より以南となる()へ堕ちた。

 二次、三次と続けて連鎖的に生じた小さな暴発もあって。

 南鳥浮島マーカスで建造された船は、自力で航行も出来ないほどの深刻なダメージを、僅か数十分で蓄積していったのである。

 幸い、曳航してくれる護衛している艦艇はあったんだけど。

 マーカスから実験結果を収集するために同行してた、科学者たちにも甚大な被害が出てた。


 死者、7名。

 負傷者、29名。

 ダメージコントロール中の行方不明者、55名。


 

 南方方面以南の海上では、激しい閃光と熱線が発生し。

 海上は瞬時に気化して蒸発。

 海底まで見える大きな穴を穿った後に、巨大なキノコ雲が雷雨も伴って発生した。

 西大陸の南部海岸線では、最大7メートルに達する高波を観測した。


 東大陸・カンガルー島では、海兎族の集落が流される災害となった。


 これらの攻撃により、ドーンフォレスト城と百万人都市が消える筈だった。

 城州王は報せを受けてあおってた盃を、壁に叩きつけている。

 同じ報せを受けた皇太子は、玉座の間を見渡しながら。

 最奥に鎮座する豪奢な椅子に一瞥。

 短く息を吐きながら蹴り飛ばして破壊してた。

《これで、仮王宮ここにネズミが居ることが分かった》

 皇太子の腹の中。

 魔女の遺産話は、幹部会議だけでしか言葉にしていない。

 白服だけの場合は隠語を用いてた。




 侍女として真面目に働く少女は、白服の会合を嗅ぎつけることが出来なかった。

 桃色にグレーのメッシュが掛かったシャギーの娘。

 定例会合が長引いてしまった為、直上の先輩メイドから『あら、働きはじめて2週間足らずで、いい御身分です事? 庭の掃除はもう済んだのかしら』なんて、一人で片すには苦労しそうな仕事を振って。

 それに着手しようと、動いたら。

『もういいのよ、あなたはさぞ立派な御身分なのでしょう? 私たちが終わらせたから、客間の食器を片してきたら宜しくて?』

 これもちょっとした苛め、いあ、或いは躾けかもしれない。

 とてつもない大きな声で。

 怒鳴られるよりかは......

 うーん。

 個人的には堪えると思う。


 ドッペルゲンガーが、客間へ赴くと。

 もう、先輩たちが片づけに入ってた――応援だと滑り込んだ彼女は。

 持ち前のスキルと明るさで、不自然なく先輩たちの噂の中に入ることが出来た。

「聞いた?!」


「なになに、なに」

 動揺した白服の口走ったことが噂のテーブルに上がった。

 まあ、例の()()のことだ。

 帝国の魔女が遺した遺産の話と、海を瞬間的に蒸発させた新型爆弾の噂。

 戦争中に使われてたら、嫌ねえ~ってオチなんだけど。

 ドッペルゲンガーとしては背筋に寒気を感じてる。


 ネズミ狩りじゃないけど。

 情報収集の危うさに鳥肌が教えてくれてるような。

「あなたの実家は?」

 桃色髪にグレーのメッシュが入った少女に問うている。

 ドッペルゲンガーは咳込みながら、

「南部ですけど」

 履歴書には数代前に落ちぶれた底辺貴族だと、記してある。

 もう、領地も家名も捨てた身だと。

 ただ、南部の小さな元荘園に。

 呑んだくれの父親と――ありふれた、没落貴族の話だ。

「南部なら、大事なくてよかったわね」


「はあ、それ? 本当の話ですか...なんだか、お父さんのことが心配になって、きました」

 わなわなって震えて見せる。

 これ、信じてくれたかなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ