- C 880話 国内の騒動 4 -
「――《愉快犯》より報告です。分断に成功しました」
蒼銀髪の少女・ユウキがリリィに届けた。
そのまま、銀髪の少女に招かれ――「肩を揉んでくれる?」なんて頼まれてた。
ユウキには無いふくよかさ。
柔らかそうって妄想しないことはない。
自室で、毎晩。
なんども自身を慰めてる“オカズ”はリリィである。
彼女は知ってるんだけど。
見てると面白いので、焦らしてるだけ。
「そ。あのお姉さんはムラっ気が多くてねえ~ 指示通りに動いてくれたことって、まあいいか」
そうそう。
銀髪の少女は考えるのを止めた。
思考停止じゃなくて気を揉むのを止めた。
同年代の子は然程、多くは無い。
しかも殆ど、潜入やら諜報やら、新聞配達に牛乳配達、えっとピザの注文に焼いたりもしてるのか。
まあとにかくも、だ。
出たっきり帰ってこない子がリリィの同期であり、同い年の諜報員たちである。
年間通して出会うのは、同期会くらいなものか。
「何か悩み事でも?」
ユウキに耳元で囁かれて。
我に返る。
すーっと息を吸い込みながら、
「そうねえ、想定外で言うと...《殺戮者》がやらかした伯爵の首ふたつ。(目元を摘まみつつ)報告のが正しいのだとすると、全面戦争はシナリオに無かったなあってね」
シナリオ。
それはグィネヴィアさんの思惑の話。
彼女からのオーダーは、単純。
「シナリオ?」
「そ、長引かせておいて欲しいって」
自室で署名が残る書類と、格闘しているラミアも知る依頼。
◆
三公同時蜂起による南洋王国の損失は甚大となった。
かつての協力者だった“亡命政府”メンバーの粛清も終わって、いざ、舵取りをという先での失態。
辺境公制度は残したくはなかった。
理由としては、今まさに、だ。
一度は滅んだ国だから、立て直しではなく。
建て替えに相当する。
城州王が統治する国家は、中央集権である。
東大陸にも同時に国が興ったが、問題ではない。
「西に集中してた分、分散した西大陸の富を一極集中すれば国力は回復し、結果的に短い時間で蘇る」
その妨げが辺境公制度だと、王は告げた。
東西大陸がひとつという見方が出来ない連中からすると、東の備えは?
って声が聞こえてくる。
そこは、皇太子が。
「新しく国は興したが、どんなに規模が小さかろうとも...侵略戦争ってのは、どうしても国家同士の総力戦になる。なぜならば、一方は“どうしても土地がほしい”、もう一方は“祖国を護るんだ”って意識のぶつけ合いだからだ。気力が尽きた方が先に折れるんだが、その気力ってのが国力だ!!」
内戦中の南洋王国が今、試されてるとこだけど。
兵士の士気が重要なように。
市民の士気も必要だ。
言っててブーメラン。
新しい政府と新しい役人たちの顔がお見合いし合う。
「えっと、ではですが...今まさに国王陛下と三公はそのような、状況ですが?」
皇太子の恐ろし気な笑み。
寧正の微笑み。
首の骨でも鳴らしながら、
「ああ、だから勿体ないがひとつ消えて貰おうと思う」