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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2016/2356

- C 879話 国内の騒動 3 -

 やや不機嫌そうにロッキンガム侯から派遣された、斥候は扉近くに陣取った。

 いつでも逃げ出せるように備えている。

 とはいえ、短剣でも半歩しかない距離だし。

 ドアノブに手が掛かれば、即座に口封じに動くだろう。

「その言葉はそっくりお返しする」

 城州王側の斥候は、ナイフを卓上に置いてた。

 投げるもよし、持って突くもよし。

 こんだけ狭いと...


『逃げられないよねえ...』


 ふたりのどちらも、耳元で囁かれたように感じた。

 両耳を塞ぎ、壁へと飛ぶ。

 パキンって音が。

 何かを割った。

 何かを踏んだ。


 何かが出た?

 薄い桃色の煙だ。

 色がついているのは、ヤバイもんだと分かるようにする為。

 リリィの毒である。


 訓練用ので、実戦では色なんてない。

 静かに忍び寄り、毛穴から沁み込んで音なく殺す――こんなものをブロックごとに使うのだから、カース・ドラゴンの二つ名は、最早、最大の敬意でしかない。

 暗殺業界での覇者か。

「ち、からが...」


「はいら、な、い...」

 ふたりが床に沈み込む音が聞こえた。

 肉を裁いてた猟師はもういない。

 そこにあるのはガスマスクを被った女性。

 山小屋に行くのだからドレスは着飾れなかったけども、着崩された軍服からこぼれる乳房。

 これは目に毒だ。

愉快犯フェイカー姐さんの着方にはいろいろ、ツッコミどころ満載ですよね?!」

 妹たちが、この山小屋をセッティングした。

 猟師小屋に見立てた特別な捕獲罠。

「あら、ありがとう」


「着崩れてるってのに、なんで気が付かなかったんです?」

 毛皮の帽子から黒髪をかき出す。

 しなやかで黒く長い髪。

 北天出身のような雰囲気がある、大人の女性だ。

 ラミアとはほぼ同期だが、階級は少尉相当でしかない。

 上官と浮なを流し過ぎた。

 疎まれて、恨まれたのだ。

「さあ、リリィちゃんの幻覚剤か、いえ、あの子の毒は怖い...わね」

 吸いこめば、認識がズレる。

 山の霞はすべてリリィの毒だ。



 斥候が戻らないところに。

 双方の送り込んだ者の、()()が帰ってきた。

 身体の一部だけど。


 まあ、それで十分だろう。

 “アレは約定を反故にした”

 実際のところ、404は内容を把握していない。

 城州王の宮殿にて潜入中の報告から、三公同時蜂起の結末は『()()()()()()()』って事だと知らされている。

 つまり、南方軍も同じ罪で裁かれるのだ。

 今上陛下は苛烈な人だ。

 指を切り落とされた白服が、吐露する。

 黒髪の女性が足首を抱えて座る椅子の眼下に、這いつくばせられた斥候がある。

 とりあえず...

 彼は虚ろに口を開いてた。


 心に鍵をかけて閉ざしていても、リリィの毒には言葉を吐かせる魔力がある。

「ほんと、怖いわね...あの子の毒は」

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