- C 878話 国内の騒動 2 -
新しい州境に作られた赤い帯は、警戒してた両軍の魔法士が発見した。
夕日でさらに真っ赤に映えた新たな国境線。
吐気しか呼び覚まさない光景。
錬金術で産みだされた記録撮影器のはじめは、躯の山からとなる。
「こ、これが?!」
両軍ともに思ったに違いない。
誰が先にヤった、と。
南方は新王家に弓は引かない――申し合わせた、約定であった筈だ。
東部と北部に同調しなければ、所領と血統は安泰であると。
そう、この反乱は“八百長”なのだ。
◇
座り心地が良かったのか。
ラミアを尻に敷いた、リリィは咳込みながら、呑んでた茶を吹いてた。
気管に入る大失態。
なんで気管に入ったのか――《殺戮者》がやり過ぎたからだ。
咽変えちゃって、口や鼻から水というか、茶が吹き出てた。
いやあ、溺れるって苦しいんだよなあ。
「頭から真っ黒になって、マフラー代わりに大腸なんか撒いてるからどんな戦場かって、想像したもんだけど。まさか、何?! これ何万とかってレベルじゃないよね!!!」
リリィだって2万の兵を物言わぬ肉袋に変えた。
輝かしい戦果であると言えば、英雄だけど。
見方を変えればただの殺人者でしかない。
本人も自覚はあるけど。
にっこにこで帰ってきた《殺戮者》には...多分、罪悪感は薄いんじゃないかな。
「州境の更新ですかね?」
白髪の少女の淡白さ。
南部の辺境公は疑心暗鬼になってるだろう。
この状況下で意思の疎通は難しい。
「いや、この状況下でも斥候は出る筈だよ。先ずは事態の把握が必要だから...その上で、どちらかにどう対処するべきかなんて、確認作業めいたアクションが起こされる」
リリィの目くばせに“白髪の少女”が頷く。
◆
思った通りに行動してくれるのは楽なことだ。
想定内って事だし。
しっかりと両者の情報が、404に集まっている証拠でもある。
リリィ曰く、メイドちゃんに感謝だよね――と。
後日、《ドッペルゲンガー》の下にヴェネツィア連邦産の“石鹸”が配達されている。
勿論、リリィからのプレゼントだ。
彼女の目利きにより選別された一品。
『ラミア姉さんも、選んでましたがそちらは返品しました。どうかこのトロピカルな泡をお楽しみください』
なんて、カードも添えられてた、とか。
さて。
小屋に集まった斥候は、元から狩猟小屋で肉を裁いてた猟師に一礼。
「奥を使わせてもらうぞ?」
頷く猟師は目の端へ。
両軍にとって中立を気取る共和派のエージェントだという。
ああ、ええと...実はなんだけど。
南洋王国は、旧王朝を慕う王党派と。
王家を象徴としてのみ崇拝し、政治は共和制にすべきだとする共和派。
寧正を信奉する皇族派などが蠢いてる。
北部と東部の辺境公は、城州王から謀反人というレッテルが張られる以前は中道。
張られた以後は“革命派”へと変容してた。
今のところは独立する方向性のようで。
「さて、どちらが先だ?!」