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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2014/2358

- C 877話 国内の騒動 1 -

 夥しいまでの躯が横たわる荒野に、ぽつんと人影。

 やり切った感だけ残して、肩で息継ぎしてるのが――敵味方区別なく、総勢5万の死者が出た戦場の勝者。赤茶色の巻癖のあるショートヘアが、風に揺れている少女である。

 コードネームは《殺戮者マンイーター》といった。



 頑強なるジェラルトン伯爵率いる7千の騎兵隊を加え、新しい州境の戦いは陽が登り切らない、午前7時頃から戦端が開かれた。なんと言うか、いつも通りに()()()()のような判然とはしないけど、何故か確かな指示で南部軍は後退し。

 攻め手が前進する。

 これが1メートル。

 決まった時間で、決められたような距離だけ()()()


 伯爵が数メートル先からでも分かるように、

 大袈裟に怒鳴りながら幕舎に転がり込んできた。

 南部方面軍とも言い換えられる、三公同時蜂起。

 南洋王国軍人としてでなら、新たな王家に忠義を誓って国土を護るのは、貴族のあるべき姿だろう。

 前王朝から爵位を下賜されたのならば...また、別の選択肢もある。


 その場合は、爵位の返上で...

 いち騎士に戻って戦功を立てるとか、そういう事だ。


 でも、でも。

 この三公の蜂起には理由がある。

 新たな王家は、これまでの公の労いではなく、改易をもって報いると言ったことだ。

 明らかに戦場を欲している雰囲気で。

「おっと、やっと来た...か」

 ジェラルトン伯爵を迎え入れたのは、ロッキンガム侯爵に仕える“ストームハク”伯爵。

 侯爵の右腕が一連の“お遊戯”をさせている人である。

 ま、伯爵は領内の全兵力で参集したとこ。

 かき集めるのに時間がかかったんだけど、遅参の罪は免除されている。

「ストームハク卿か、で。何故、今日1日だけで6メートルも下がっている?! しかも交戦による死亡者も怪我人さえも見受けられず...これでは、」


「まるで――そうだ、戦争ごっこだ。こうでもして形を整えないと、三公同時蜂起なんて馬鹿げた作戦に乗っかれないからな。大体考えてみろ、新体制の国家と戦争して何の得がある?」

 理不尽な要求の改善とか、その当たりだろう。

 ジェラルトンの下にも、任を解き私兵は国軍に編入せよって通知が来た。

 まあ、任と言われるほどの職責は無かったけども。

 脊髄反射で領地没収のように捉えたところはあった。

「いや、現実に領地が没収された貴族があっただろ?!」

 自分の言葉に納得しながら、

 なんとなく吠えてた。


 が。

 ストームハク伯爵は煙でも払うように。

「それは中央の代官たちの話だ。あれは准男爵も含めて前王朝の癌だったからな...、それを成敗してくれたのさ今上陛下さまは、な」

 事情を知ってそうな素振り。

 では、一連のごたつきは貴族たちの暴走だと?






 悲鳴があがる。

 いささか突然すぎたのと、微か過ぎたのもある。

 戸惑いながら、ジェラルトン伯爵が幕舎の外に出た――目を凝らして、新しい州境に目を向けた。

 唖然とさせられたのは異様な光景だ。


 本日は終了とばかりに、各陣営が旗を振って終幕した舞台上に。

 イレギュラーな役者が上がってた。

 次々にぽんぽん、首が飛ぶ演目。

 小さな影がひょいひょいって具合に飛び跳ねるだけで、首がぽんぽぽん、ぽんぽんと飛ぶ。


 悲鳴が上がれば、

 そちらでぽんぽん、こちらでぽんぽん。

「な、なあ...アレも」

 伯が指を差し向けた先から視線を外した。

 ジェラルトンの目は天幕の中にある怯えと、慄き双眸。

 ストームハクに向けられてたんだけど。


 あ...


 今、彼の意識が途絶えた。

「ひぃぃぃぃ!!!!」

 ストームハクの視界からジェラルトンの頭が消えた。

 ぽんって音でもしたかな?

 小さい影が横切ったら、伯爵ゆうじんの首が飛んだのだ。

 それはもう一瞬である。

「な、なんだ、何が...何がぁぁぁぁ」

 逃げる、どこへ。

 隠れる、どこに。

 諦める、なにに。

 思考が止まる瞬間がある。

 状況が分からないから、天幕の外に出る。

「あり得ない、あり得るものか」

 部下から『如何しましょう』って声が掛かる。

 とりあえず、天幕の中に居れば攻撃されていない。

「うん、未だ...ね」

 囁く声音が広がった。

「今は外にある人たちを優先、一息ついたら...再開するね」

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