- C 876話 それぞれの人々 4 -
南の地域は、まあ。
404の協力要請に対して“NO”を突き返した。
この戦いは貴族の矜持であるとか。
矜持や信条では飯は食えない。
南の辺境は偏屈だったねって、反応に終わってる。
ダービーにある娼館にて。
ラミアが深くため息を吐きながら、ソファベッドに倒れ込んでいる。
ただ、仕入れたソファは反発が強すぎたようで。
彼女はその殺し切れない勢いと、身体全体の重量で反発されて――床に叩きつけられた。
「え?! なんで、なんで今、卓をズラしたの!!!?」
そっちか。
卓の角で怪我してたかもしれないし。
或いは仰向けに背中を殴打してたかも。
そんな可哀そうな状況にならないよう、リリィは卓をズラした。
「うそー、ヤダ、妹が可愛すぎるぅー!!」
真実を知って悶える姉。
いや。
これは見てられないデレようだ。
「ズラさない方がよかったですね、はい」
◇
床で湿っぽくなってるラミア。
「いつまでです? 踏んでもいいんですか」
「踏んでください、思いっきりでも...少しでも」
とは冗談で言っても、その気は誰にもない。
ただ、現実逃避したいだけだって分かってる。
404の存在意義は、内戦の早期解決ではない。
「北部と東部が拮抗している今、南部の戦線は膠着どころか1日1メートルの最前線更新なんて、状態が続いています。州境の防衛戦はほぼ、壊滅的で...」
読み上げる一般事務の隊員たちも、状況の深刻さくらいは理解していた。
このままでは州都・“ドーン・フォレスト”城に迫るのも時間の問題である。
「それでも、要請が反故にされました」
東部・辺境公の紹介状をもって協力の打診はした。
結果、我が領内には不要で無用と...返されたんだ。
取り付く島もないほどにきっぱりと。
「さて、要請がないので。並みのスパイならば遠目から見てるだけ、です」
ラミアというクッションに座るリリィ。
いつ見ても鮮やかな銀髪の才女だ。
ま、姉も尻に敷かれて満足のようで。
「爆弾魔、破壊者に愉快犯なんてのも居ますが...」
リリィの指先が、群衆と化した妹たちの端で止まる。
赤茶色の巻癖のあるショートヘアな少女。
いや、幼女か。
コードネームが実はある。
妹たちの中で異彩を放つ――その子は、殺戮者。
◇◆◇◆◇
現在の主要な人物たち 4
【甲蛾衆・ネームド】
〇アリス・カフェイン
甲蛾衆の棟梁にして、最高の暗殺者。
甲蛾衆は、交渉事から暗殺、同業者へのサポートまで熟す“なんでも”屋だ。
スパイって柄じゃないし。
情報収集はついでに過ぎない。
アリスさんもゴスロリの衣装の中に、ナイフとか拳銃が隠されてるし。
可愛い日傘だって防弾仕様だって話。
界隈では有名らしいんだけど、身バレしてないっぽい。
可愛い顔した、おっさんだってのに。
〇スノー・カフェイン
妹分で、コードネームは白兎。
その時々で姿や、雰囲気が変わるけど姉(或いは兄)想いのいい子。
自堕落なアリスさんに代わって、しっかり者である。
首輪がついたり、鞭で叩かれたりしてるけど。
大好きなんだとか。
〇黒蜘蛛
子蜘蛛7人と共に甲蛾衆に客将扱い。
仕事は情報収集。
ただ今、休暇中。
もっぱら東大陸にて。
〇不知火
雲雀、啄木鳥とともに作戦行動中。
モルゴースさんから指令に応えるために、防諜教導団が送り込んだスパイの調査に励んでいる。特定したら、現地の司法機関に逮捕させるよう、働きかけているんだとか。
【特務機関・404魔導大隊・ネームド】
〇ラミア・リリードリス
特務機関所属、階級は少佐で。
幼女や少女の多い百合の園を預かる身。
自身も凄腕の処刑人なんだけど...。
実質は成れない事務処理に性能不足もあって、ポンコツぶりを露呈。
妹に癒されたいと常々、オープンに吐き出している。
〇リリィ・フリードリス
16歳、銀髪の少女――お嬢さま然としていて、優秀な能力を持つ。
404は彼女の手腕により機能している。
コードネーム“巫女”は、まあ。
大隊内の立ち位置に起因している――二つ名はカース・ドラゴン。
〇ユウキ・シアン
青銀髪の少女。
なんでもデキるけど、なんでもは選びたくない。
リリィの為だけに腕を振るうっていう性格で。
普段から身の回りの世話を焼いている。
彼女のサポートがあるから、部隊運営も円滑に回るようだ。
〇メイド娘
コードネーム“ドッペルゲンガー”と名付けられた、桃色に灰色のメッシュが掛かった少女。
とりあえず“人”限定ではあるけれども、骨格の制限なしに巨漢からベイビーまで、変装の類でなく変質できる技能を持つ。
これらに戦闘能力は、持たせられなかった。
情報収集するのみで。
潜入とか、自由に行動が出来るとか。
まあ、そんな感じ。
直近の記憶も奪えるんだって。
〇ハンティング帽の雑用係
コードネームは“狩人”。
狙撃手であるってことで、同じ隊員では年少組に籍を置く。
同隊員にニックネームをつけるのが好き。
〇白髪の少女
コードネームは“爆弾魔”。
リリィが副官としての仕事に従事できない時の代役。
戦い方は不明。
〇赤茶色の巻癖のあるショートヘアな少女
コードネームは“殺戮者”。
獲物はナイフの二刀流で、リリィでさえ意識しないと知覚できない影の薄さ。
活躍は、こうご期待。
〇優男“灰人”
えっと、この人...何したんだっけ?
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次はっと。