表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2012/2356

- C 875話 それぞれの人々 3 -

 ビスマルク多島海から使者が来た。

 使者の主は、ヒルデスハイム伯爵といい、亡きグラスノザルツ帝国から連綿と続く家系。

 ビスマルク・ソロモン海の治安を守るという大義を掲げた、所謂、代表者のような立場なので――。

 東大陸のクイーンズランド王国と、西大陸の南洋王国へ向けて使者を送ったという。


 目的は、改めて(ご近所付き合いの為)国交を開くというものだ。


 やっぱり立地的な条件で――タイミングが変わるのは致し方ない。

 めんどくさいことに。

 どっちが正規か、或いは正当かでごねる寧正。

 まったく大人げない。

 この謁見には一つ大きな落とし穴があった。


 謁見にて立ち会ったのが、寧正の実子。

 次代の王であると内外に印象付ける為の演出として、寧恬にすべて任せていた。

 彼は一言で言えば、猛禽類である。

 頭上高く頂きから下々を見下す“目”があり、傲慢だが尊大な精神と強靭な精神が備わってた。

 父・寧正なら怨恨の炎で焼き尽くそうとするが、寧恬なら口実を探す。

 そういう性格の男なのだが。


 父親には、使者が立地的()()で差異が生まれたと、報告した。


 これが激高の要因である。

 流石の南洋王国には、海を隔てた小国を叩くほどの戦力は無い。

 が、くすぶり続ける怨嗟の炎くらいは...。

 植え付けることが出来ただろう。



 使者が、甲蛾衆の根城に姿を現す。

 単に飯を食らいに訪れただけのことではあるが。

 アリスと深い仲って訳じゃあないし、多分、伯爵も甲蛾衆の事は知らんだろう。

 それでも、使者の真横に相席で――アリスと会話に興じた。

「旅の方ですね」

 使者にだって警備の者は付く。

 賓客なんだけど。

 使者にだって歓迎されなかったことくらいは、肌感覚で分かっているし。

 王国が用意した護衛が、暗殺者に成らないとは言えない。


 いや、今までの国内政策からすれば。

 身震いが起きる。

「ええ、その通りです」

 素直に応じた。

 ヒルデスハイム領では珍しくもない、帝国の家庭料理“鍋”。

 腸詰肉と豊かな野菜を具材として、コンソメスープで煮る料理。

 ジャガイモがフォークの先で崩れる頃が、食べごろって。


 鍋を頼んで、出てきたモノに口笛。


 帝国の家庭料理が出てきたからだ。

「こ、これは?!」


「な、べ...ですね」

 お品書きにも“鍋”しか書いてない。

 売れ行きは微妙だけど、全体の山賊ガサツな料理の方が売り上げを占めているので。

 帝国料理を出してても...

 アリスさんの趣味程度で採算が取れてたりする。

 いや、他と連結決算故の黒字化だ。

「ははは、こんな異国で故郷くにのメシが食えるなんて」

 涙が頬を伝う。

 ほっとしたというか。

 いや、これで喰った後に死んでもいいかなと、も。

 そんな風に考えてしまった。

「あなたは、生きて帰還すべきです」

 アリスさんが使者の手をとる。

 それはあ~ 勘違いしちゃうシチュエーション。

 ほ、ほら。

 使者さん、耳赤いよ?!


◇◆◇◆◇


 現在の主要な人物たち 3

【クイーンズランド王国・ネームド】

〇泉州王・寧景 さん

 元の名は“寧華”と呼ばれ、馬術、剣術、銃術、法術から兵法に長けた、娘だった。

 直上の実姉は女王となって東洋王国に人生を捧げたのだけど、寧華は王族という枠がキライだった。

 皇位継承権の放棄。

 封号や爵位の拒否なんかで市井に出奔することを望んだ。


 性格、まんま泉州王。


 (人魚族女性の)15歳、春。

 呪病に冒されたことで皇女ではなく、王国の守護者としての生き方に塗り替えられた。

 肉体の汚染ではなく、魂の崩壊を招く呪いのよう――ただし、長く悩ました呪病の解呪に成功し、いつでも元の身体に戻れるのだけど...ご本人は今も呪病に冒されているのだというフリを続けてる。

「3世紀以上も経って今更でしょ? 15歳の身体には...いや、成長するという興味は無くも無いけど(泉州王おのれの胸をまさぐりながら)、ちょっと動機が不純すぎるし。もう、ほんと今更、腸詰肉を腹に咥えこむとか、さあ」

 言い方。

 女の子がいう言葉じゃねえし。


 で有耶無耶になった。


〇寧懿 さん

 泉州王家の次期当主にして、寧景さんの実妹。

 母の腹が違うって話で、年齢も皇太后や寧景さんと比べて孫ほどの差がある。

 と、いうか。

 海エルフ族の最長老となってる、泉州王のお父さんが長命な件。

 東洋王国は女系なんだけど。


 王領のひとつ、ハイエルフ()というドームでは悠久の時間を生きる祖霊なる王がある。

 ブリトンから分かれ、海を彷徨って東豪州大陸に流れ着いたエルフたち。

 彼らの祖は海底都市を築く。


 ぶっちゃけると。

 南洋も東洋の血統主義は、最長老が産ませたハーフエルフの歴史っていう。

 泉州王は旅先で知り、妹を連れ帰って育てて――「この間、郷帰りしたんだけども。聞いて驚かないでね、メルちゃんに、マルちゃん。実はさ、寧懿の他に3人も弟や妹がデキてたんだよね。マジ、祖霊オヤジどの絶倫過ぎないって!!!」

 いや、聞かされたボクらも参るけど。

 寧懿さんも複雑だよ、それ。


〇摂州王・寧麒 さん

 泉州王・寧景さんが熱心に指導してた二代前の親王のお孫さん。

 結局、摂州王の封号に新しく当主が就かれなかった為、夭折した寧麒さんの実父に代わって面倒見てた。今上女王の男子が“公”に封じられるので、それぞれの立場から順に長男ならば“倭州王”、次男であれば“城州王”、三男ならば“河州王”、四男ならば“泉州王”、五男ならば“摂州王”ってな具合に。

 ま、一部例外はあるけど。

 当主の座は世襲ではなく王家から迎え入れるものだった訳で。

 空席に家の解散ってのも、あったっぽい。


 寧景さんの尽力によって、寧麒さんは摂州王を襲名。

 封号を名乗ることに。


 あ、収入は荘園の1割程度。

 家名存続の条件らしい。


〇四角い顔のもじゃもじゃ

 懲罰旅団長で、摂州王さんの副官。

 名前は無いけど“四角い顔に顎髭もじゃもじゃ”の人。


 獲物は大刀、馬が小さく見えるほどの偉丈夫で。

 滅茶苦茶、男臭い。

 脇なんか目が沁みる。



【真・南洋王国・ネームド】

〇城州王・寧正

 南遼王時代に聖櫃と接触して、現地協力者となる。

 自分の野望を満たす国が欲しくて暴れてる人。


 内面は苛烈、激しく燃え上がるタイプで消化されにくい。

 くすぶり続けた半世紀。

 ハーフエルフの寿命を憎悪で燃やして動き続ける、化け物。


 前王の遺骨で盃を造ったとか。


〇皇太子・寧恬

 寧正の実子にして、皇太子。

 策略家としての気質あり、白服の中では“ヴォーティマー”と名乗っている。


 目つきが鋭く、才に溢れてるような雰囲気。

 白磁のような肌に金色の短い髪が朝日を浴びると、神々しさが増すという。

 短槍の二刀流が好み。



【東洋王国・ネームド】

〇河州王・寧雄 さん

 実姉・寧花さんの代役として国内外を欺き通した。

 その際、後宮に入るとバレるので疎遠として扱い、母と娘の不仲説を意図的に流布した。

 結果...


 内紛になった。


〇皇太后 はん

 実妹である泉州王を呪って、河州王も毒殺しようとした元凶。

 精神的に色々、ヤバイんで...


 まあ。


◇◆◇◆◇


 よーし、次だ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ