- C 872話 各国の動向 2 -
再興された南洋王国の実態は陸軍国家である。
蹂躙される以前の王朝は、東西大陸で軍艦を建造していた。
が、建艦思想って言うのかな。
それが列強各国と比較すると、半世紀は旧くて――姉妹国でもあった東洋とは実に1世紀も差があったというんだから、海軍国家と謳うには聊か眉唾のようで。
国内のめぼしい産業は、貧しくなる一方だった。
城州王の資産は、廃れた技術の再建に投じられた。
いや、彼の資産では無いな。
もともとは聖櫃が持ち込んだ、東洋レベルに調整された工業技術だ。
最新の錬金術から、魔導技術も投資されて。
ダービーが活気づき始める。
皮肉なことに。
隠れ蓑であるラミアさんの娼館も、なんか盛況らしいんだよねえ。
◇
さて、城州王・寧正の国内投資は国軍の整備にも注がれる。
前王朝の王族が所有していた荘園は、スライドするように城州王の下へ献上され。
まあ、そう仕向けたんだけど。
荘園の管理代行をしてた、男爵や子爵らは褒美として“改易”させられた。
理由は――
「治安のひとつも治めきれないとは怠惰である!」
こんな一言だった。
手をこまねいてたわけじゃない。
地方の代官程度にしか過ぎない小貴族たちには酷な状況である。
せめて、王城の無血開城でもすれば。
民衆の手で王族の血が流れることはなかった。
また、寧正はこういう発布もしている。
「王国の再興は叶った! これより貴兄らの任を解く故、領兵を国軍に統合されたし」
ってなものだ。
相手は、東に睨みを利かせている辺境公らだ。
北部、東部、南部の三者。
確かに国軍の再建は急務だけど。
この独立した三公があれば、クイーンズランドからの侵攻は防げる。
故に焦って、国軍強化に臨まなくとも、公共事業でも行って経済を回すという政策が可能なはずなんだけど、城州王は国内に敵を求めた。
ああ、これはアレだ。
国内をひとつにまとめる為の荒療治なんだと。
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各国動向の続き
6)東洋王国従属国・燕王国
南遼・北遼、青島要塞を領有する城塞国家。
国境の街・台州から“燕”を見ると、晴れない厚い雲の満ちた状態だという。
国のカラーみたいなもので。
いつも雨が降っているわけじゃない。
巨大な要塞砲が厚い城壁から見えるんで、たぶん。
そんな勝手なイメージになったのだろう。
軍艦は東洋から購入しているのだけど、戦車などは自前。
7)北天五公・台州自治区
燕と国境を接とする台州を緩衝地として、置き留める。
河州王と欧州の間で、秘密会談があって北天は身動きが取れなくなってる。
利権ちゅーちゅーされちゅー。
欧州総領事館がある。
8)欧州評議会
ナーロッパ中心主義とでもいうか、そうした発言権がある国家が働きかけた組織。
加盟国は少ないけど、これが次の火種になるのは間違いない。
例えば...
加盟国と、非加盟国の意見対立とか。
9)中欧諸国連合・グラスノザルツ連邦共和国
欧州連合・盟主。
欧州評議会・最高評議長国。
肩書がたくさんある、かつての帝国。
睨まれると、ひどい目に絶対遭うこと間違いなし。
東洋王国の賄賂だって、ここが一番ちゅーちゅーしてたし。
◇◆◇◆◇
まあ、こんなとこかな。
あとは重要人物か。