- C 867話 東西対決 7 -
海岸線の街には、改易させられた騎士や戦士が溢れていた。
今のところ、騎士崩れや戦士崩れって感じの、本当に職にあぶれた者たちだ。
冒険者ギルドにでも登録すれば。
修めた職業の能力次第で、いくらでも仕事の斡旋はくるし。
或いは再就職先も見つけてくれるもんだけど。
それは、働く意欲のある者だけの話だ。
気位だけでは飯が食えないと。
早々に見切りをつけた者たちは、見込みがある。
だって、己の腕に価値を見出したのだから。
あとは評判通りか確かめればいい。
◇
青銀髪の少女ユウキ・シアンは、戦士として潜り込んで彼らを査定した。
結果、厄介ごとに率先して首を突っ込んでくれる、同志を得たところだ――
「全治三日とか、言いませんでしたか? 先生!!!」
すでに4日目の朝を迎える病室で。
ミイラのような傭兵団と、元気なユウキに“灰人”が対峙してるシーン。
「金貨40枚、革袋で2つも貰っておいて...未だ、しゃぶる気か?」
しゃぶる気は毛頭ない。
気合で立てなくもないけど、イマイチ乗り気じゃない。
「俺たちのような崩れを何に使おうってんだ?!」
ユウキの言葉足らずで、仕事の内容が公開されていなかった。
おっと、少女の目が泳いでる。
「なんだ、話しても居ないのか」
ユウキに呆れた灰人。
情報漏洩を防ぐためと言えば、納得もするだろうが。
「白服の足止めだ」
と、聞かされて――怖気づかれても困るし、告げ口も状況次第だ。
◇
大柄マッチョで、包帯の巨漢は瞼を固く閉じている。
寝てるのではなく思案中。
「仮に俺たちが告げ口をするとしたら?」
灰人に問う。
ユウキへ向けてた身体をゆっくりと優男に、向けてた。
「どうもしないだろうな」
理由としては、白服の進軍を遅らせるのが目的だからだ。
何者かが“白服の邪魔をする”という報せに対して、治安悪化が著しい海岸線は、行軍ルートから外されると、灰人は告げた。
また、いくつかの迂回路が策定される間だけでも、時が稼げる。
灰人曰く...
「何も、実力行使だけがすべてじゃないのさ」
ここに。
「とはいえ、だろ?」
「ふん」
体格差のある男が見つめ合う。
ユウキは...チュでも、するのかと思ったっぽい。
「海岸線を行軍させて、進むも地獄、退くも地獄というってのに落とし込みたいとこだ。出来れば、白服の戦力が削れるのが望ましい。さすれば半包囲程度、北方辺境伯の武威で弾き返せるはずだからな!!」
改易されて燻ってる戦士たちが、辺境伯の下にぞくぞくと集結中だ。
兵士の選別も404魔導大隊が担ってるんで、質はかなりいい。
「で、俺たちは何から始めたらいい?」