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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2003/2357

- C 866話 東西対決 6 -

 ユウキ・シアンは支度金の殆どを、北西部の海岸線で使用した。

 金貨数百枚はあった筈だけど。

 懐の革袋まで加えれば、もう、すってんてんだ。


 再び、エージェントと出会う頃には、だが。

 身なりも随分とスラムに落ちた少年のようだったという。

「それ」

 青銀髪も揉まれた様子で、あっちこっちに毛が跳ねてる。

「変装ですか?」


「んにゃ、自前。獲物の()()()()以外は質流し喰らっちゃって。一文無しに、まあ~アレだよね。普段から使い慣れない金貨なんか持つと、身を落とすってのは嘘じゃない訳だ」

 オーダーを掛けてから、1週間もかかってない。

 同時刻には、銀髪の少女リリィ・フリードリスが、階級以上の戦功はたらきをした。

 やっぱり災害級と一般人では、こんなものかと。


 比較対象が間違っている。


「で、さ。もうちょっとお金ちょうだい!!」

 ユウキが拝んでくる。

 支度金も有限である。

「何に使ったんです?」

 断り難い愛嬌を魅せるので、つい財布のひもが緩くなる。

「んー、ガチャ?」


「は?! ガチャ!!!」

 ルートボックスによる――これは言葉のあやだろう。

「遊んでないで、仕事してくださいよ?」


「もう少しで“推しキャラ”が手に入りそうなんだ。あと一押しって感じはするんだよね、で、実弾が足りなくなりまして...」

 色々突っ込みたくなってきた。

 本人が真面目なので、閉口せざる得ないが。

 やっぱりツッコミたい。

「推し...ですか」

 エージェントから革袋を受け取る。

 中身は、金貨だな。

 世界の共通通貨でもあるし、何より価値が不変だ。

 含有量で貨幣の価値は変わるけど。

 溶かせば一緒。


「うん、この重さなら十分だよ」

 重さで中身の枚数が分かる。

 稀有な才能だ。

 その革袋を、エージェントの目の前で“空”に投げた。

「な、なに、を?!」

 黒い影が投じた革袋を掴む。

 見上げるふたり――青銀髪の少年っぽいユウキと、エージェントだが。

「あれが、推しキャラ。この街一番の傭兵でね(微笑みながら)、ボクが賭けで勝ったから今日から、手足となって働いてくれる人材だよ!」

 賭けは、革袋に入っている金貨の枚数。

 エージェントが追加の資金援助する可能性は低いし、支度金と同じ額になる事もない。



 エージェントがフードの中から、周囲を見渡す。

 すっかりユウキが推す傭兵団に囲まれた様子で、項垂れながらため息がこぼれる。

「で、賭けに負けてたら...」


「お嬢ちゃんが慰みもんで回されるだけさ。可愛い顔をしているから、壊さねえよに適当に遊んだらよ。町の兄さんたちにも遊ばせてやれば、な。稼がせてもらえるだろ」

 下卑た笑いが止まらない。

 エージェントは顔を拭って――

「この子がそんな飯事ままごとに負ける筈もないでしょうに。これ、賭けにもなってませんよ」



 フードを取ってから再び、周囲を見渡す。

 酷い惨状だ。

 全治...は、三日あたりか。

 すぐに動けそうなのは棟梁でも、難しい。

「これで街一番?」

 買いかぶりではって、エージェントは告げた。

 中性的なしなやかな雰囲気を持っているが、れっきとした男であり、スパイである。

 コードネームは“灰人かいじん”。

 凄腕なのは確かなのだが、担当したチームが壊滅する度に()()()を失っていったので、今は公私ともに“灰人”と名乗っている。

 ユウキは、彼を()()と呼ぶ。

「これが街一番です、先生」


「ふむ、宜しい。で、次に...」

 咳込みながら、会話を邪魔する傭兵ひとり。

 推しキャラのようだが。

「先刻の賭けにもなってないですか、アレはですねえ。イカサマです...最初から支度金と同じ額が、あと2回、彼女の下に届けられるのです。届ける者がわたしでなくても、です」

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