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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2002/2358

- C 865話 東西対決 5 -

「ボクもー、リリィと仕事。したかったー!!」

 開口一番が、これだ。

 無線機ではなく、エージェントに向かって吐く我儘だ。


 青銀髪で、ボーイッシュ。

 自由奔放で律儀なとこもあるが、背伸びがバレバレな普通の少女だ。

 スパイで無ければ、だが。

「あの人、今回は万単位の軍隊をひとりで仕留めるお役目ですから」

 エージェントも、防疫訓練は受けている。

 講師は勿論、リリィ大尉なわけで。


 あれの訓練の凄まじさは、アケロン川がほんの一瞬、垣間見えるとまで言わしめたもの。

 苦悶に歪ませてる、マスク無しの機関員の苦しむ様を見るのが好きと、か。

 言ってた――所謂、彼女の為の公然なる実験場である。


 ちゃんと解毒薬は貰える。



 長椅子にちょこんと座った少女。

 楽しそうに、

「それ、ボクも体験」

 ちょっと動きが止まった。

 万単位の――で、だ。

「えっと、ソレ?」


「はい、即死なんて優しさが頂けない。彼女の為、彼女が楽しみたい()()の、甘美な時間でしょうから...如何なる防毒服なども役には立たないでしょう。腐食毒は勿論のこと、吸気、接触、粘膜感染、考えられるすべてにおいて、オープンに当たると...聞かされて」

 青銀髪の少女が激しく震えた。

 身震いのレベルじゃなく、ガチの悪寒。

 恐怖で身体が死にそうなレベルの、だ。



 銀髪の少女のことは好きだ。

 折れないメンタル――リリィに害を成せられる者は少ないし、毒が封印されても、頭脳と腕っぷしだけでも“黒蜘蛛”に対峙できる場数けいけんがある。普段からでは想像もできないけど、よく同僚を謀っている。

 仲間への愛は重い方――好き嫌いくらいはある。が、好意を与えられるのは数人でいいと、割り切ってる。これは、孤児院での経験であり...愛情というリソースは有限だ。今のところ迎え入れてくれた、義姉と可愛がってる妹分だけあれば。ただの肉壁にくらいしか思えない。


 ま、そんなトコ。


「――で、震えて怯えてくれてる、普通のスパイ先輩にも()()()お仕事があります!」

 なんか含みのある言い方だが。

「超人的じゃない?」


「ええ、超人的じゃない、です」

 404エラーズは、超常的な部隊であると思う。

 そこにごく()()()()が混じっていること自体、すでに超常的なんだが。

 比較対象が化け物なので、評価が鈍くなりがちだ。

《404でエースを張れる、貴方ユウキさんも十分...化け物です》

 胸中でひとりごちる、エージェント。

「そっかあ」

 仕事の内容は、ごく簡単な不可能任務。

 北部辺境伯の下にも、白服の2個旅団が、()()()()として投入された。

 少なくとも西大陸・新政府軍の包囲網は完璧で、辺境伯の防戦はギリッギリというトコ。

 ここに追加の――は、流石に。


 で、青銀髪の少女の特命は。

 予備戦力の足止め、或いは半壊が望ましい。

 依頼オーダーは辺境伯だけど。

 不可能とする下命は大隊長からによる。

「あの人も、無茶を言う」


「ですね」

 エージェントは肩を竦めた。

 ユウキは最近、姓を変えた。

 ブライ男爵家の家出娘では、流石に自身の士気にかかわる。

 リリィの助言により。


 ユウキ・シアンと名乗るようにした。

 シアンは青空をイメージしてるんだと思ってて。

 毒大好きっ娘の当人リリィは『シアン(化合物)』だ、そうだ。

 これは、はじめてのすれ違いか?

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