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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2001/2356

- C 864話 東西対決 4 -

 西大陸のもたつきは、所謂、強引な国内統制によるものだ。

 国民を棄てて出奔した亡命政府に、なんの権限があるのか――と、各領主たちが反発。

 それを城州王という武力でねじ伏せて、半月余り。


 その舌の根も乾かぬ間に。

 南部、東部、北部で連鎖的に反乱の狼煙が挙がった。

 東部“ノーザン・テリトリー”州の国境都市“ホワイト・レイク”に迫ってた、白服が率いる2個旅団。

 無整備状態の交易路を行軍しながら、軍楽隊の演奏に聞き惚れてたとこ。


 その一行の目の前には、立ち姿だけで見惚れてしまいそうな、麗しき銀髪の少女。

 しなやかそうな四肢に似つかわしくない豊満なバスト。

 俯いたふしの彼女は、往来の真ん中にあった。

 行軍の邪魔だと声を掛ける者は無く、ただ、俯いている銀髪の美少女見たさに。

 モーゼの如く...

 海を縦に引き裂いて見せた。


 これぞ、魔性のなせる御業。

 これ、本人が一番、苦手とする色仕掛けの初歩なんだけど。

 木っ恥ずかしくて顔が上げられなかった、それだけのこと。



 行軍が過ぎ去り、

 美少女は不意に踵を返して、振り返った。

 “ホワイト・レイク”辺境都市までは僅かに6里余り。

 いや、5里強ほどの距離だったんだけど。


 ぼとぼとと、静かに膝から崩れて地面に沈む兵隊。

 少女の顔を覗き込んだ者は、己の顔を掻きむしって絶命しているし。

 彼女の脇を通った者は、目や耳、口から血を吹き出して死んだ。

 あとは喉の皮膚が削れるほどに掻きむしった者もいれば、水筒の水を浴びたまま卒倒した。

 洗い流そうと考えたようだけど、防疫の訓練の成果なのかもだが。

「わたしの操る“毒”に並の防疫は効果が無いのですが、これは聞こえてませんね。ええ、即効性ではないので、まあ、苦しかったでしょう。藻掻きながら、僅かな希望を抱きながら...その光、奪うのが趣味なのでよく拝ませてください」

 まだ、息がありそうな白服の襟を掴む。

 血糊の唾を吐かれたけど。

 彼女には毒の耐性がある。

 むしろ、毒とは彼女の血液を指すとか。

「関心はしませんが、そういう行動が出来る男性ひとは嫌いじゃありません。出来れば、その...口に入るようにもう少し()を、狙って貰えたらよかったなあって思うんですが。...あら、残念。もうコト切れてしまってますね」

 殆ど独り言みたいになってた。


 グラスノザルツ共和国・特務機関サーヴィターに所属する、リリィ・フリードリス大尉には二つ名がある。コードネームとは別のどちらかと言えば、こちらがスパイ界隈で有名な通り名であろう、もの――“カース・ドラゴン”。

 呪いという“毒”を届ける者と。

 気が付かれなければ、彼女一人で街の数ブロックが地獄に成る。

 爆弾なんて大層な兵器ものは必要がない。

 ふらりと、彼女が化粧水の入った商品鞄を持ち込めればいい。

 その小瓶ひとつで。





 いったい何人、殺せるのだろう。

 まさにドラゴン級のディザスターだ。

『あー、えっと』

 懐から無線機を取り出す。

 魔導技術れんきんによるアーティファクトなんだけど。

 リリィの手元のソレは電波が良くないらしい。

 ぶんぶん振り回して、手のひらに当てて叩いてた。

『わーやめやめ!! 叩くな、厳禁っ。ちゃんと聞こえてるから、叩くなってんだろ!!!!!』

 ぼっこんぼっこん送信機のマイクに叩く音が入ってる。

 耳を澄ませてた、上司の泣き顔が容易に想像できた。

『あ、通じた』


『通じてたよ、叩く前に返事を待て! この脳筋娘がッ』

 なんか、よく言われる。

 毒ガスのような芸術品をつくっても、評価は低いようだ。

『ま、とりあえず...首尾を聞きましょう』

 見渡して、下唇のしたに指をあてる。

『うん、死んじゃった』

 簡単な言葉へんしんに力が抜ける。

 何か言ってやりたいけど、リリィはあれでマイペースだし、気分屋だ。

 拗ねてもいいこと無いから。

『この毒さ、もう少し日光に晒されないと中和出来そうに無いや』

 って事で。

 リリィ・フリードリスという銀髪の美少女は、休憩に入った。

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