- C 863話 東西対決 3 -
本拠地・クイーンズランド州。
州都は自治区が置かれてた、“グラッドストーン・セントラル”に居を移し替えている。
かつて隆盛を誇った同王国だけども、旧王都“ブラックカッセル”のように海岸線から内陸深く入る都市の発展は、それぞれの王家が立つとそれぞれに変化していって。
西大陸に実権が映ってからは、すっかり寂れてしまった。
東西に分割し、中央には険しい大峡谷と、火山地帯という厳しい自然によって交流が、海から海へと海岸線でのみ行われれば、おのずと発展するのも海岸線だけに成る。
街道の整備だって往来が激しい海岸線のみともなれば...。
結果的に内陸部の発展は。
自治庁舎の一つを貸し切った“聖櫃”ご一行。
何故か、エサちゃんとボクが混ざった一行である。
◇
さて、唐突に増えたふたりだが。
ひとりは、短髪に切り揃えたボーイッシュな雰囲気と、わりと怜悧な態度を魅せる女性。
聖櫃も女尊男卑の性質のようで。
メルちゃんも頭の上がらない、モルゴースと呼ばれた方。
伝説的な魔女だったり、巫女だったりした“アヴァロン”の住人だったか?
ハナ姉が居れば、即座にうんちくを垂れ流してくれたのだろう。
「東西が本格的に衝突するのは大分先の話だから」
と、宴会部長なんて呼ばれてたグィネヴィアさんが口を開く。
普段のふたりは、メルちゃんたちに介入することは無いというのだけど。
ちらちらと、メルちゃんの膝上にあるボクが見られてる気がする。
いかんなー、これは自意識過剰というヤツかも。
「スパイによる諜報戦は始まってるって」
「そういう話だった、な。忘れてはいない...この娘たちを監視していたから、各列強の諜報員たちは労せずして潜り込み、それぞれの立場にでもついて情報収集に励んでいるだろう!!」
城州王の諜報員も漏れなくある一定の数は。
「うっわ、ゴキ...いや、ジョージみたいな」
「まあ、そういう事だね。当たらずも遠からず...この時点までは防諜に神経を注いでいなかっただろう。いや、ここは敢えて情報の流布だって行っているんだよ」
モルゴースさんは、ひとつぶっちゃけた。
エサちゃんの実家から帝国の遺産に働きかけて貰ったと言って、帰国中だったある一団の派遣と貸し出し依頼を取り付けたのだと言ったのだ。
それが――404エラーズ。
帝国の魔女が遺せし、特殊機関のエリート部隊だ。
◆
西大陸では、未だにイレギュラーな戦闘が続いている。
頑強なる“ジェラルトン”と呼ばれた、同地の伯爵が徹底抗戦の構えを崩していなくて。
彼に賛同するように同地“ドーン・フォレスト”城に、人々が参集。
その中には、更に南にある“ロッキガム”侯爵があったので――武力統一したのも束の間で、内乱が発生したという。
いあ、同時に作為的な状況も考えられるけど、北部にある“カルカ・リッジ”の竜人族が蜂起した。
竜人とは言っても只の蜥蜴人と大差なく。
火山地域でも顔色一つ変えることなく、大峡谷の絶壁に横穴を掘って暮らしている。
ま、そんな面倒な種族からも。
NOを突きつけられた訳なんだけども。
城州王にとっては、従わなければ要らないものリストに入っただけだ。
「まったく、どいつもこいつも...」