- C 829話 皇太后の戦い 9 -
「引導か、らしいな他人事だが。この役目はべつに誰でもいい...寧雄が寧花のフリをしていると、今なら世間に流布しても、ふふ。王都でこんな戦争ごっこをしてるんだ、察しのいい市民は真実だと受け入れてくれるだろう。彼らには王朝が何を大事にしているかなんて、どうでもいい事だからな」
復讐は果たされている。
寧花こと、現女王体制がすでに絶たれていることで。
それがどのタイミングで公開されるのか。
王朝の正統性が次の段階へ進む。
系譜図には、女性の名が刻まれてきた。
女王の国だからだが。
◇
そこに前女王の子として名を刻む。
あたらしい時代の幕開けを迎えようとしている――その前に排除すべき者たちがある。
それが彼なりの引導だ。
身内だからこそ、身内でけじめをつける。
「先ずは、後宮に匿われている二の姫らだ」
マーカスにある姫皇子の生死は、諦めたと見ていいだろう。
これは城州王の反乱なのだから当然だ。
皇子から王位継承権を破棄させてある。
政府が機能回復すれば、直ちに施行させられるよう書類の手配も済んでた――その資料室に黒蜘蛛らが潜り込んでた。
「表に出ないものはすべて、ここにありそうな気さえする」
不知火は引き出しを引くたびに零す。
黒蜘蛛だって、似た気持ちだ。
手元の資料には“被検体A再生計画”ってある。
複雑な気分だけど。
表紙を捲る勇気がでない。
「どうしました?」
甲蛾衆のふたりが幼女の両肩に手を――
優しく介抱する。
察したのだ。
彼女の記録がそこにあったと。
◇
黒蜘蛛のクローン計画も、アンチエイジング計画もマーカス学園都市で、循環された技術だった。
帝国の魔女との関連性は、この資料室を漁れば出てきそうだけども。
ぱっと見では流石にたどり着けそうにない。
ただ、凄い執念で技術を磨いてきたことだけは分かる。
外法の宝庫だ。
「不知火さん」
膝を抱えて蹲る幼女に支えを。
「このふたりを無事に脱出させないと、子蜘蛛たちにも会えなくなるぞ」
少し意地悪な言い方だけど。
彼なりの励まし方だ。
彼女の尻の形は、良かった。
さわり心地が良くて...
運動量のわりには柔らかい。
「な、なんだよ」
ジト目の黒蜘蛛。
抱えようと、手を伸ばした先に尻があるだけで。
別に他意...
いや、もう一度。
「もう、いい!」
彼女は立ち上がり、雲雀らへ。
「弱音を吐きそうになって、ごめん。もう大丈夫!! 今は、過去の自分に嘆く暇はない」
確かにそういって決別した。
右の拳で頬をなぞった訳なんだけど。
そこに涙が乗ってたかは分からない。
◆
キルダさんが寄こしたのは、ペンギン型ゴーレム。
怪鳥ゴーレムの収容力よりかは、いささか多いだけで寿司詰めでざっと...
5百人くらい?
重装備で箱詰めされる兵士の苦悩は無い。
「脇が、目に、目にぃ~」
これは、まあ...お約束だ。
むさい男衆がひとつの容器に押し込められたら、地獄だ。
地獄じゃない光景があるとしたら...




