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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1958/2521

- C 828話 皇太后の戦い 8 -

「あ~こらこら」

 黒蜘蛛は、スカートを履いてない。

 狙撃すれば蜂の巣を突いたような大騒ぎになると分かってるから。

 自身が走れるよう、上下はジャージ姿である――中等部で支給された、ごく一般的なジャージだが。お土産屋で買っておいて正解だったと、彼女のささやかな自慢である。

 狙撃がヒットしたのは自慢ではなく、失敗談。

「どこが8%女の子じゃないんですか?」


「だれが女の子じゃない言った!!!」

 はあ、確かに言ってないね。

 92%ほぼほぼ美少女ってセリフだったか。

 悔しがる不知火。

「なんだと思ったんだよ!」

 聞きたいか?

 ボクは聞きたくないよ。

 他人にどう思われてたかなんて。

「いあ、まて...」


「8%は竿だと思ってました。その外見的に、巨根では8%は小さすぎますし。かといって矮小でも数字を盛り過ぎな気がしたので――」

 あ?って漏れる。

 黒蜘蛛の目に涙。

 実際、そんなトコでじゃれてる暇はないんだけど。

 小さな女の子を不知火という、もやしが泣かせた。


 知ってしまったのだ。

 他人がどう自分を評価していたのかを。

 8%をどう曲解してたのかを。



 オカルト研究に嵌ってた陸軍の特殊部隊は、だ。

 ついに、アンチエイジングを発見する。

 多くの被検体たちの尊き命によって、だが。

 その禁断の技術は、魔法――まあ、一応は科学なのだけども。

 わからない事、解明しなくてはならない難しい事はすべて、魔法ってことにした。

 しちゃったんだわ、この部隊が。


 で、かねてよりクローン技術の被検体だった黒蜘蛛は、アンチエイジングも受けることになる。

 これは成り行きじゃなく、必然だったんだ。

 彼女のクローンたちは皆、優秀ですばらしい戦闘員へと育っていった。

 しかし、クローンからクローンをつくる方で、失敗が続く――スライムのような個体による単細胞分裂のように、単純な話ではない。そもそも、このクローンだって所謂、分裂に近い形の魔法科学に頼ってた。

 あくまでも、黒蜘蛛個人の切り取りみたいなもの。

 20代の彼女からは、20代の女性が覚醒する。

 30代の彼女からは――


「クローンとはいっても、名ばかりで。そりゃ、最初からスキルを分けた分身みたいなものだから、兵士として使えて当然だった。ボクの魔力と生命力が尽き掛けた時に、若返りの外法が完成する...()()()()()っていうのが完成させてた、別の技術の応用だと聞かされたけど。死が迫る者には、危険性とか、何もないじゃん」

 龍眼って名の真珠大の宝珠を吞まされて。

 術式に参加したという。

 不知火の手はまだ、黒蜘蛛の尻から離れない。

 弄られてる本人も、気にしないようにしてるっぽい。

「つづけて」

 それは合いの手か?

「8%って含みがあるようにみせてるのは、人じゃなくなった部分の話だ」

 詰まらないって不知火から。

「な?!」


「しぃー」

 雲雀と啄木鳥から、声を張ることが禁止された。

 だから場所を考えろ、あれほど。


 眼下の兵士から、排気口へ視線が向けられた。

 手持ちの籠からネズミを放つ――走り去る動物の影を見て「なんだ、ネズミか」。

 ベタだけど、効果はある。

 兵士がもう一度、排気口に興味を持たれたらOUTなんだけど。

 その時は、脱出してるかも。

 してるといいなあ。

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