- C 828話 皇太后の戦い 8 -
「あ~こらこら」
黒蜘蛛は、スカートを履いてない。
狙撃すれば蜂の巣を突いたような大騒ぎになると分かってるから。
自身が走れるよう、上下はジャージ姿である――中等部で支給された、ごく一般的なジャージだが。お土産屋で買っておいて正解だったと、彼女のささやかな自慢である。
狙撃がヒットしたのは自慢ではなく、失敗談。
「どこが8%女の子じゃないんですか?」
「だれが女の子じゃない言った!!!」
はあ、確かに言ってないね。
92%ほぼほぼ美少女ってセリフだったか。
悔しがる不知火。
「なんだと思ったんだよ!」
聞きたいか?
ボクは聞きたくないよ。
他人にどう思われてたかなんて。
「いあ、まて...」
「8%は竿だと思ってました。その外見的に、巨根では8%は小さすぎますし。かといって矮小でも数字を盛り過ぎな気がしたので――」
あ?って漏れる。
黒蜘蛛の目に涙。
実際、そんなトコでじゃれてる暇はないんだけど。
小さな女の子を不知火という、もやしが泣かせた。
知ってしまったのだ。
他人がどう自分を評価していたのかを。
8%をどう曲解してたのかを。
◇
オカルト研究に嵌ってた陸軍の特殊部隊は、だ。
ついに、アンチエイジングを発見する。
多くの被検体たちの尊き命によって、だが。
その禁断の技術は、魔法――まあ、一応は科学なのだけども。
わからない事、解明しなくてはならない難しい事はすべて、魔法ってことにした。
しちゃったんだわ、この部隊が。
で、かねてよりクローン技術の被検体だった黒蜘蛛は、アンチエイジングも受けることになる。
これは成り行きじゃなく、必然だったんだ。
彼女のクローンたちは皆、優秀ですばらしい戦闘員へと育っていった。
しかし、クローンからクローンをつくる方で、失敗が続く――スライムのような個体による単細胞分裂のように、単純な話ではない。そもそも、このクローンだって所謂、分裂に近い形の魔法科学に頼ってた。
あくまでも、黒蜘蛛個人の切り取りみたいなもの。
20代の彼女からは、20代の女性が覚醒する。
30代の彼女からは――
「クローンとはいっても、名ばかりで。そりゃ、最初からスキルを分けた分身みたいなものだから、兵士として使えて当然だった。ボクの魔力と生命力が尽き掛けた時に、若返りの外法が完成する...帝国の魔女っていうのが完成させてた、別の技術の応用だと聞かされたけど。死が迫る者には、危険性とか、何もないじゃん」
龍眼って名の真珠大の宝珠を吞まされて。
術式に参加したという。
不知火の手はまだ、黒蜘蛛の尻から離れない。
弄られてる本人も、気にしないようにしてるっぽい。
「つづけて」
それは合いの手か?
「8%って含みがあるようにみせてるのは、人じゃなくなった部分の話だ」
詰まらないって不知火から。
「な?!」
「しぃー」
雲雀と啄木鳥から、声を張ることが禁止された。
だから場所を考えろ、あれほど。
眼下の兵士から、排気口へ視線が向けられた。
手持ちの籠からネズミを放つ――走り去る動物の影を見て「なんだ、ネズミか」。
ベタだけど、効果はある。
兵士がもう一度、排気口に興味を持たれたらOUTなんだけど。
その時は、脱出してるかも。
してるといいなあ。




