- C 827話 皇太后の戦い 7 -
後宮府軍の大将は、皇太后である。
当然、指揮もしているし、策も講じていた。
が、現場指揮官には鎮護将軍っていう正一品の大将軍が、那岐と対峙してた。
ふたりの年齢差はほぼ無い。
いあ、むしろひとりは、頭角を現して後宮府にスカウトされ。
片方は組織に疎まれた。
能力の開花や、覚醒の時期だって同じなのに出世に影響したのは。
「種族の壁だ」
城州王が港で、見上げる鋼鉄の船がある。
航空戦艦というキメラ。
数百メートルの滑走距離で離艦していく航空機と、魔法士では運用が全く違ってくる。
ナーロッパでは、錬金術の目覚ましい発展によって航空機が産まれたけども。
聖櫃からの情報提供が打ち切られたら、東洋における軍事革命は再び。
時代相応にまで押し戻されてしまった。
故に飛行魔法士の育成と配備が、艦隊の航空戦力の要になったわけで。
このハイブリッド艦艇だって、それの延長だ。
「種族の? ですか」
エスコートされる親王。
那岐の王都反乱は、城州王にとって大規模な軍事行動を隠すためのカモフラージュとなっていた。
ま、それは将軍も承知の上である。
「後宮府の鎮護将軍は、海エルフ族の傍流だというんだそうな。まあ、確かに...系譜から見て、何代か前に名門貴族の何某とかが、婿に入っているとは聞いている。とは言ってもクォーター以上の系譜の話――今更、種族云々も無いと思うのだがな? 相手は魚人族だし」
人魚も突き詰めれば、マーマンと大差ない。
顔がキレイか、マズイかの違い。
卵産んで、孵化させて育てるってんなら、猶更、サカナだ。
「ご自分の種族をそこまで言われますか?」
「艦長は、海狼族だったか?」
対面の制帽を腕に挟んだ紳士が、頷いた。
今は人の姿を取っているけど、興奮したり、人化が解ける行為に奔れば。
いとも簡単に種族バレする。
「海エルフ族は頭の固い連中だ。一部の例外はあるけど、総じてそれらは変人扱いにされる。血統にこだわるなとか、歴史を重んじての改革をとか...そうした声には、長老たちも耳を貸さない」
「だから、殿下が引導を渡しに行かれるのですか?」
その為の兵力のようだ。
黒蜘蛛と不知火、雲雀に啄木鳥も浮島の裏側にあった、通風口から転がり込んで。
隠し港に潜り込んだ状態だ。
◇
鮮明な航空写真に感謝である。
端的に言えば、逃げ切れると思ってたけど。
白い湯気が出ているこの地まで転がる外、道が無かった。
道中、不知火からは「雲雀さんや、啄木鳥さんの口車に乗って黒...いえ、スズメさんを助けに来ちゃいましたが。実のところ、彼女を置いて脱出した方が良かったのでは無いでしょうか?!!!」と、たぶん百メートル過ぎる頃、何度も愚痴られた気さえする。
不知火がもやしに見えるせいで、
悪意の籠った呪いのような。
「ボクを担いでくれたことには感謝するけど...」
前後逆に、荷物のような担がれ方には抗議が入る。
92%、ほぼほぼ美少女という彼女の尻。
不知火は軽く、まさぐった。




