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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1949/2519

- C 822話 皇太后の戦い 2 -

 超高空にある“コウテイ・マンタ”へ、久しぶりの直通交信。

 遠見の鏡で、互いの姿を見るのも久しぶりだ――キルダさんは少し、運動不足のような外見になったように見えて、それが原因か分からないけど不機嫌そうである。

「心配ありがとう、こっちは艦内の道場で身体を動かしているから。いあ、それはいい...それはいいのだが、この通信の目的を聞いても良いのかね? ハナ殿」

 FAX代わりのウナちゃんは放心状態。

 恐らくは、本人、ログアウトしているっぽい。

「まあ簡単に言いますと、潜水も可能なゴーレムを貸して欲しいなあ、と」

 それは簡単すぎる説明だよ、ハナ姉。

 ほら、キルダさんの目が細くなってる。

 これ納得してないっぽ。


「ほう、それはナニか? 魔界軍われわれにタクシーの代わりをしろと」

 ほらあ。

 怒ってるよ、なんかすっごい怒ってる。

 謝って、とりあえず一回は、頭提げちゃおうか。

「はい。そうなりますね」

 あ?

「ふむ、あい分かった... 貴様がクルクルパーだってことがなっ!!!!」

 鏡の前でぐー、ぱーと拳を握ってる。

 明らかに不機嫌の原因は別の何かなのに、とうとう今の会話がそれに置換されたような。

 そんな雰囲気だって、ある。

「くるくるぱーじゃないです」


「くるくるぱーだろうが」

 そうじゃないって応酬に成ってるが。

 そういう事でしかない。

 どっちにしろ、手段としては交渉してみる価値はある。

 上手くいかないとしても。


 戦力や或いは、技術面で言えば間違った選択じゃないんだけど。

「いや、そもそも何故、われわれが介入しなければならん。ついぞ、数日前は...特例として共闘する必要があったが、この状況下でなら魔界軍と聖櫃は元の敵同士になっている。そんな状況ではないのか?!」

 至極当然。

 いあ、ごもっともです。

 うちの義姉がなんか失礼してしまって、ほんとうに申し訳ありません。

 ボクが代わりに謝ります。

「そうですねえ。今、この時点で袂を分かつ場合、魔界軍に及ぼすデメリットは“魔王ウナ・クール”の損失と、“ゴーレムマイスター”の流出でしょうか」

 軍師ハナ・コメ自身は、勘定に入ってない。

 いや、第二魔王領に自治区として認められてる獣王の娘こと、エサちゃんもだ。

 こちらは魔界にとって些末なことなのだろう。


 でー。

 鏡の前の手をぐー、ぱーしてたお嬢さんの動きがぴたりと止まる。

 小首を傾げて、さらりと動いた前髪の奥から獣のような殺気が立ち。

 対岸になってる納屋の室温が10度以上下がった気配に。


 だれかー

 エアコンはー?!!


「何千キロ離れてんだよ!!!!」

 魔術師の膝が震えて止まる気配もない。

 蛇? そんな生易しくはない。

 熊? いやいや。

 獅子だよ、獅子。

 すげぇー立派な、ポン〇リングを首に巻き。

 喉を鳴らしながらこう、左右をにじり寄ってくる猛獣のような気配。

「お、怒らせるな! ハナ殿」

 摂州王は、鏡に映ってもない背にあるのに仰け反ったまま硬直。

 失神しかけてる。

「凄いな、これが一流の剣士か!!!?」


「一流? いいや。これでもすこし頭を撫でただけだ、よ」

 瞳が光るキルダさんが呟いた。

「で、脅迫して何か得はあるのか?」


「さあ、特にありませんが。期待は出来ますね、ウナちゃんが大事か...義妹も気にかけて貰えるのか」

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