- C 820話 王都の戦い 10 -
仰ぐ、俯く、振り向く、二度見する――
「何してんの?」
ボクの奇妙な行動に対し、不遜な態度のメルリヌスがそこに。
納屋の隅で、ゴーレム設計してたボクを。
彼女は何の躊躇もなく、カイザーヴィルトへ運んでた。
あ。
もちろん。
話し相手であり、愛玩であり、アロマキャンドルみたいな扱いが入ってる。
だけど...
「語彙を高めようかと」
「えー、無理じゃね?!」
ぐっは!!
えぐられる痛み。
「そこはもっと」
「今更じゃね? で、いいのかな」
もっと抉られた。
こう真平なとこを底が見えるまでって――。
ひどい、ひどすぎる。
おいおい泣き始めたら、
「先ずは、嗅がせろよ」
って襲われた。
◆
盤上を叩くのは魔術師。
彼は、保身から焦ってた。
「何が、いや、どうしてだよ!!」
盤上の駒のほとんどが、叩かれて退場してしまってた。
城に残る僅かな兵と、城外にあるマーカス兵くらいは、盤上にある。
「いや、単純な話だけど...城州王本人は、マーカスの残ってるって事だよ。これまでの反乱は自らが先頭に立って、悉く失敗してきた。経験則から今回も躊躇するんじゃないかって、考えたんだろう」
冷酷になり切れなかった、甘さ。
那岐将軍は攻め手において力量を発揮するタイプ。
これまでの冷遇ってのが、彼に任せず守戦を敷いた事にある。
「野放しになった那岐は強い。そう鍛えた本人だから分かるんだけど。ただ突っ立てるだけの案山子なら、訓練通りに腕を前に突き出せばいいって教えれば、宦官だろうと子供でも戦えるようになる。皇太后は出した兵の士気を挫いて、退かせてしまうだろう」
叩いた盤上に拳が。
ウナちゃんを通して伝言ゲームが奔る。
もう、彼女。
FAXと同じことしかしてない。
エサちゃんは厨房で“おにぎり”を作ってる。
ボクの分は巨大な三角形で。
これ、顔くらいある気がするんだが。
喰わないよ?
いや、無理だよ。
「10日という期限を縮められないか?」
後宮勢力が壊滅的になれば、城の兵力のみになる。
城外にある兵が兵士になる瞬間、1万の烏合の衆が1万の未満ではあるけど、兵力になる。
ウナちゃんが受けた報告。
「外廷で衝突!」
という報せなんだけど、この報告で泉州王が唾を飲み込んだ。
「説得では無く、攻撃に及んだのか!? あの皇太后が!!!」
息子の背中を刺しに行ったという。
娘を取りに息子を襲う。
苦悩の末であるのは分かる。
「これが為政者の覚悟か」
「これで泉州王の読みは崩れるのか?!」
ハナ姉が魔術師を静止させて、問うたもの。
泉州王の表情は変わらず、こめかみを搔いただけだ。
「結果的に絶望が少し、遠ざけられただけだ。宦官兵の覚悟が決まったら、生き残るためにがむしゃらに動く。そうやって雑兵が兵士になるんだから、ちょっと手強い歩兵と対峙することになる、禁軍兵に同情するよ」
「でも、」
「ハナさん。動ける手段があるのなら島なんぞ」
浮島を苦労して獲った意味がなくなるけど。
おいしいお米が食えたし、十分すぎる休息もとれた。
メルリヌスを聖櫃に返せたので。
「内戦を止めよう」




