- C 799話 城州王と反乱軍 9 -
城州王の叛意についてもう一人、注意深く見守ってた者がある。
いや、正確には反旗を上げて欲しかった人物だ。
皇太后の次男、現女王の双子の弟という立場の鬼将軍・寧雄――もうひとつ秘密を打ち明けると、倭州王・寧仁(女王の長男)の実父という立場でもある。
これは過ちだ、王族のいや、王家の恥だった。
双子だからいつも一緒に居ることが、不自然じゃなかったことで起きたこと。
寧雄が年端もいかぬ頃は、まさしく少女のようだった。
取り違うように起きてしまった事故みたいな、もの。
まあ、そんな感じで。
言いくるめた。
城州王ほど直線的に、王位について考えていない。
もっとこう。
外堀でも埋めるようにして。
◇
王家に楯突く、というか。
こうした制度に楯突く反後宮勢力として、今まで多くの親王たちが立ち上がってきた。
東洋王国には、このような黒歴史がある。
公式の文献に残るべくもなく。
検証するに値しないものだから、封印されてきたけど。
確かに何度も、息を吹き返すように反乱があって、鎮圧されての繰り返しだ。
それらが太監手記という形で、宦官の中で遺されてた。
少女の姿で、後宮に入り込み。
歴代太監の手記を読むことが出来た、寧雄には幼少より疑問がある。
『内から変われないなら、外からではどうだろう?』と。
つまり外圧。
城州王は南遼王になって決起しかけたけど。
その力は後宮に及ばなかった。
彼は見ている。
ダメだ、もっと強い圧力が必要だ。
世界を敵に回せばいいのでは?!
最終結末の王座に。
遠くない未来に自分の影が据わっているイメージがある。
願望では無く、未来視のようなもので。
その傍らには同じ顔の姉が妻として、平伏している絵面。
「ああ、なんて美しい」
女ものの薄衣を羽織って窓辺にある河州王。
見る者を凍り付かせるイチ〇ツ。
凶悪な形で、大きさ、長さ。
女っぽい顔に似合わない悪魔の竿。
「いや、未だ様子見か...」
◆
布哇浮島に朗報。
接岸ゲートの封鎖が“暴力”でねじ伏せられた。
東洋の一般歩兵の採用には、海鬼族が選抜される。
身体の大きさが均一で、しかも巨躯、巨漢、巨根と膂力のある種族だからだ。
ネズミ算式に増えはしないが、一度の出産で最低でもふたり。
赤子の生命力も大人顔負けの抵抗力があって、滅多に死産もない。
職業軍人としてこの上もなく、適材という事になる。
そんな海鬼族の男たちが打ち負かされていく。
魔術師は彼らの特性から、正面突破ではない方法で打ち負かしたけど。
こっちは、圧倒的な暴力。
相手が怯んじゃうくらいの武の力で威圧した。
その正体は――
刺突剣を握るハナ姉の無双。