- C 797話 城州王と反乱軍 7 -
南鳥浮島の地下施設へと導かれる私兵たち。
2隻の葉巻型潜水艦が停泊してた。
「揚陸用に設計された軍艦だから、機動性には不安がある」
城州王自らが、那岐に諸元を伝える。
まあ、上陸部隊の指揮官ではあるけど、この作戦の総指揮も兼ねる。
船は守備範囲ではないだろうけども。
「水上艦らは?」
戦隊規模の駆逐艦と偵察軽巡洋艦のことだろう。
どの浮島にも造船工廠くらいはある。
魔法学校の対水上攻撃とか。
教材用に張りぼての軍艦が建造されることはあっても、本格的な...となると。
近海警備で使用される船の再擬装で、間に合わせた。
「ああ、こっちも釣り船に櫓でも乗せたような、張りボテだが。遠目で見られれば軍艦くらいには見えてくれるだろう。過信は禁物だから、当該海域に行けば後輩らが待っていてくれるだろう」
魔法学校の卒業生たちのことだ。
協力者は多いことに越したことはない。
王都の白服は後宮府の動きをけん制し、散り散りの卒業生たちはそれぞれの専門職で、バックアップ。
王国の秩序を正す為――とか。
口々に叫んでた。
脳が灼けるような甘美な心地よさに、那岐の老将も。
その真後ろでほくそ笑む、城州王とは温度差があったように感じられた。
◆
さて、ボクらだ。
布哇浮島と漸く合流できたわけだけども。
驚くことに、布哇が合流してから反旗を翻してた――完全に掌握が出来なかっただけの話。
地上班は百数十名の使徒騎士団で構成された聖櫃の最大戦力。
怖くなってカイザーヴィルトで上空に逃げた、裏方らは。
責められないな。
だって、指示統制をしてた魔術師が、10日ちかくも留守にしてたから。
目まぐるしく変化させてしまった島内の掌握は。
熾天騎士のアーサーには勝ちすぎたのかもしれない。
ただし。
同僚のモルドレッド卿は、魔術師に連絡を取れと再三。
要請したという。
「さて、こういうと縁起が悪いんだけども。騎士団の皆に現実を伝える外はない!! 俺たちモルドレッド班はアーサーのド阿呆と、使徒騎士長のガヘリス君の班とも引き離され、孤立無援になっている。負傷者6名、死者は回避できたけど重傷者2名で動かせない状況だ!」
赤髪の野生児めいた女の子。
それがモルドレッド卿。
魔術師に手を引かれて――「今日からこの子は聖櫃の四騎士に召された!」と、お披露目されたのが記憶に新しい。聖櫃の幹部メンバーは、母体組織だった頃からの知り合いが多く、殆どが顔見知りだったのもあって少女の能力を疑う者はわりとあった。
しかし。
うん。
そんな重圧を、彼女の持つ執着の無いカラっとした性格で跳ね除けてしまった。
今は、聖堂騎士出身の一般兵から絶大な期待が寄せられている。
ま、彼女といると退屈しないとか。
何でも出来そうな予感がする...って類の期待なんだけど。
モルドレッドが見渡す兵士の顔に曇りは無い。
浮島地下施設、最深部。
医療区画のブロック内で立て籠もって4日目になってた。
重傷者の治療は――。
「助け、来ますかね?」
曇りは無いけど、焦りは多少ある。
医療区間だから保存食とか、クスリ、栄養剤とか。
兎に角、籠城するには多分、向いている方だと思うけど。
「ああ、来るさ。来てくれる...それを信じて戦い抜くよ!!!」
魔術師さまが見捨てる筈は無いんだからって言い聞かせるよう、自分のまな板を叩いてた。