- C 796話 城州王と反乱軍 6 -
城州府に集まった私兵の数は約5個中隊規模。
700~800人近く入るんじゃないかな。
更生施設にいた不良学生たちも、漏れなく参加させられてるからね。
尖兵として初動の戦力としてはかなり揃えたんじゃないかな。
もっとも、カリマンタン島を占領し、凱旋中だった元帥府と陸軍の陸戦部隊を、王都に送り込むことが出来ればもっと楽だったとは思うけど。失った戦力にうだうだと、未練がましく勘定するのは城州王にはなかった。
彼の場合、手持ちの駒が100人でも時期が来れば、後宮府を襲撃してしまうような度胸がある。
しかも今まで未遂で終わってきてたのは、決起集会まで上げたその日の夜に“協力者”と名乗るものから
『その行動、当局に筒抜けになっているぞ!!』なんて投げ踏みがあったというのだ。
じゃあ、今回も。
王都・後宮府に潜り込ませている白服たちからは何も聞こえてこない。
◇
腰に剣を提げた者たちが並ぶ中で、
第四学園長は、窮屈そうな軍服姿で登壇する――「諸君、同志を指揮する那岐九郎である!!」
陸軍出身の鬼神。
那岐少将、大将まで昇進してた現場たたき上げ期待の巨星だったが。
方面軍団長を殴り飛ばして、その経歴に黒海苔が塗布された頑固者。
事情は憶測ばかりだけども。
魔法士たちの自爆攻撃に対して『異』を唱えたことにあるようで。
南遼王時代の寧正に拾われた、クチだ。
「「将軍だ、鬼神さまだ」」
と、口々にざわつき始める。
まあ、それは戦意に直結するものであるから、あえて静止されなかった。
「この戦いは中央に座する一部の悪鬼どもに正義の鉄槌を与えるものである!!」
本気ではない。
いや、那岐少将も血が上って上司に反抗したが。
暴力に訴える必要はなかった。
いや、いやいや。
そうじゃない。
彼自身も、あの時点では特攻攻撃も止む無しと、胸中のどこかで。
ほんの少し考えてしまった自分に、腹がっただけで。
上司を殴ったことには後悔もある。
そんな懺悔めいた話に、寧正は言葉を挟むことなく聞いていた。
那岐は、救われたと思っているひとり。
だから、今度は――寧正の望む戦争に加担しようとしている。
理由は“なんとなく”だ。
◆
工業科の工場にまで歩を進めた雲雀、啄木鳥らだが。
目を点にして妙な箱の前にある。
「どったの?」
黒蜘蛛と不知火が覗き込み。
箱の中で様々な腕が、無から有形のナニカを生み出しているんだけど。
それ!! 3Dプリンターじゃないですか、やだー!!!
「これも...まさか」
「すっご、じゃぁーこ、じゃぁーこ動いてどんどんライフルっぽいもんがさ、生まれて来てる感じがするんだけど? 何、コレ!?」
黒蜘蛛だってはじめての反応だ。
こんな便利なシステムがあるなんて。
「これがあれば!」
「軍艦とか、もちろん様々な有機物で作れば、料理だって再現が可能だと聞いたことがあるけど。いあ、アリス様にお土産話が増えちゃったよ。まあ、たぶん...これも聖櫃騎士団が余計なことした結果なんだろうけどもさ」
その通りって、誰かが胸張ってそうな気がするけど。
3Dプリンターは、ヴォーティガンがカイザーヴィルトの整備室から盗んできたものだ。
工業科の工場に置いて、私兵たちの武器がプリンターによって作られた。
今は、そっと静かに休息させられてたんだけど。