- C 777話 帰還と反撃 7 -
校舎裏に呼び出される。
まあよくあるカツアゲだと思って、裸銭をポケットに忍ばせておいて。
「飛んでみろよ」
と声でも掛かれば、2、3飛んで小銭を取られたら。
憧れのシーンになる。
こんなベタなのがやりたくて、間諜の少年は食堂で金をばら撒いて見せた。
程よくステレオな同級生に奢ってたわけで。
えっと?
呼び出されて校舎裏に行けば――
とんでもない数のガラの悪い生徒たちが居た。
おやおや。
どうしてこうなった?!ばりの驚きよう。
「いや、マジでなんすか...これ!!!?」
◇
南鳥浮島の学園都市は、中央に第一学園を置き。
その周囲に5つの普通校を配置してた。
なんの為か?
決まってるじゃないか。
優劣を子供の内から叩き込むためだ。
また、羨望も集める。
入学試験こそは平等に行われる――貴族だろうと、庶民であろうと関係なく。
入学後も、編入試験は都度行われるので、実のところ。
生徒にとっての安らぎなど、このマーカスに連れてこられた時点で喪失してた。
じゃあ、はっきり言おう!
この学校で学ぶことは等しく、国の財産になる事である。
で、始点を戻そうか。
「あらら~ なんですコレ?」
ガラが悪いだけなら、まあ、学園都市の外縁部にも居そうな予感はある。
都市を運用するんだ。
それこそありとあらゆる人材を募集した。
人材も平均的に見れば、そこそこ使えるんだけど。
格差は生じる。
どこへ行ってもだ。
格差が無いように見えても、格差は生まれる。
そういう風に出来ている。
例えば。
運命でスキルが授けられる、宿命的な取得方法だとしても。
戦士職に明るいのと、戦士職だと告げられるのとではモチベーションが違ってくる。
剣術ってだけでも大小あるし...
大剣を扱うのが上手い人に、小剣が好きな人。
これが同じ戦士枠だとしても外見上、平等に見えるけど。
本人たちからしたら不平等もいいとこだ。
そうやって格差。
妬みや嫉妬も生まれていく訳で...やさぐれもする。
「見たトコ、みなさん...落ちこぼれちゃった人、たちですか?」
雲雀は失礼なことを口にした。
自覚は無いけど、
自信はある。
さあ、飛べと言って――殴られた。
あ、お腹はやめて!!
赤ちゃんできなくなる。
アリスさん仕込みの変態モード。
「イチ学の奴らはそうやって...」
手が出た男の傍に呼び出した本人がすがり寄る。
「ダメだよ、手を出したら」
兄さんとか聞こえた気がするが、似てない兄弟。
男の周りも似た雰囲気で、制止させてた。
うん、これは学校側も行き届いた躾けの賜物か?
「っるせえ!!」
巻き付いた腕を解かせて。
ガラの悪さもあってか、怒鳴り散らす。
呼び出した本人も小さくなってた。
「およ?」
「どうせ、カツアゲされると思ってきたんだろ?」
三白眼の男から睨まれた。
雲雀は口端の腫れを確かめつつ、
その場で大きく飛ぶ。
鳴るよりも重みで、脱げかけるズボンの方だろう。
どんだけ持ってきたんだよ...