- C 776話 帰還と反撃 6 -
大鳥浮島は、例の監視島と合流してた。
霧の濃い海域から動かない人工島。
普通は島なんてのは動かない。
星に繋がっているものだからで――人工島は正に、水に浮かぶ葉のようなものだ。
あ、ゴミかも?
バケツ張った水の上に、くるくると回る落ち葉。
そんな...
「身も蓋もないこと考えないでおくれ、油まみれの坊ちゃん?」
ボクの背に立つ親王陛下。
口元には真新しそうな、純白のハンカチーフ。
そんなに匂いますか?
いや、そこじゃないか。
ボクの背にあるのはあくまでも保護者の立場にある高貴なる人で。
ボクの手元に注目して、
次いで一緒に地べたに腰を下ろしている、総長さんに対する姿勢なんだ。
この子はまた、こんな場所に座り込んでる――みたいな、感傷をだ。
「何を弄ってるの?」
湖の乙女号に乗せた“乙女”号の整備中。
かの潜水艦に倣って、ボクの方も魔導炉ではなく精霊炉のハイブリッドにして見ようかと思った。
コスパは思った以上に悪くない。
ただし、魔法で容量の問題を不問にしても、その魔力供給元もハイブリッド化した。
どちらかが止まると、一気に負担も増す。
咄嗟にダメージコントロールを、ゴーレム側で取捨選択できないと...詰むかも。
「精霊炉の小型化ですかね」
思わず言っちゃあいけない人にぽろっと。
ああ、ボクの馬鹿。
目を輝かせる同胞がいる。
「なになに、どうやって小型化するの? どこを、どうやって、えっと大精霊じゃないの?!」
なんて矢継ぎ早に質問が。
今はさ、陸地の納屋で。
今後の方針というのを探ってるんじゃないの。
「あ、それな。布哇と合流しないことには始まらんそうだ」
ああ、そっか。
ハナ姉もそんなこと言ってたなあ。
だから自由行動になった、と。
彼女は、今、摂州王と泉州王の烏と共に別室にある。
台州に店を構えてた、アリスさんら変態の消息が消えたとかで。
まあ、盛り上がって。
あ、違うか。
「フリーランスの調停者として、君たちの協力者はこちらも、そして欧州も頼りにしていたのだが、うん。あのスパイどもを野放しにはしたくないというのが、本音だ。少なくとも、我々の同盟に対して敵対はしないのだろう?」
聖櫃と、真・王党派、魔界のゆかいな仲間たち――っていう奇妙な同盟関係のこと。
さあ、ボクらはアリスさんの行動に口を挟むことは無い。
敵対されるなら、うん。
何かの尾を踏んだんじゃないかな。
◇
南鳥浮島に閉じ込められた雲雀――が甲我衆の放った、間諜である。
父は貿易商で、母が男爵令嬢だったという続柄の末子の少年がマーカスの魔法学校へ。
背景設定としては不自然なことはない。
東洋では珍しいことは無い。
むしろ平凡すぎて、ありきたり過ぎた。
成り上がり貴族ってのは...
虐められるものである。
特に貧乏上級生から。