- C 774話 帰還と反撃 4 -
「聖櫃さんは?」
同盟を組んだのだから、本音が聞きたい。
農場の施設は、まあ。仮設なので今、納屋に機材が運び込まれている最中。
浮島の施設を全面的に解放したっていい。
ただし、その考えは泉州王個人に寄るもので、総意じゃないから。
摂州王を含めた軍部の承諾が必要になるだろう。
表層的には“今更”って言葉も囁かれて入るけども。
浮島が担う役割も違うので、その一線だけは超えないようにするとか――意見は他方から出てはいた。
少なくとも。
これの障害は、ボクらの存在が一番に考えられる。
だって、確実に部外者だ。
◇
ヴィヴィアンさんの腹の上に跨ってるウナちゃんを他所に。
すのこを敷いた床板の上で仰向けになってる彼女に視線が集まってた。
決して、照れてるウナちゃんに向けられたものではない。
「この場合はどっちに尋ねるのが正解かな?」
親王が覗き込んだ。
摂州王は多忙につき、泉州王のみであるから。
親王と言えば、彼しかいない。
「悪いですけど、こんな状況で失礼します!」
「ああいいよ。どんな格好でも」
仰向けに下衣に手を掛けて脱いでいたっていいし。
それこそお腹に圧を感じて、ミニマムな幼女の体重を感じていてもいい。
ま、悦に入り過ぎて飛ばれては困るんだけど。
「ふふふ、腹に掛かる圧の強さで私が逝くと? まさか、もっと膝から締めて腰を下ろして貰っても結構なんですよ!!(軽く首を捻りながら...)むしろこの圧を深く強く感じていたい気分で――」
変態が多い。
義妹の趣味に頬を赤らめる義姉。
やや、引き気味の泉州王。
「あ、いや」
「東洋の在り方をどうするか...でしたか?」
頷くだけに留めた。
何か後に引くような言葉を引き出したくないというか。
窮屈そうな苦悶を浮かべて、
「私じゃなくて義姉に聞いてくださいよ。決定権は...無いんだから」
ああ、そういう返答ならもったいぶらなくて良かった。
が、振られたメルリヌスさんも、オドオド挙動不審めいた動きの中で、両掌を広げ指もぴんと伸ばして拒否の姿勢へ。
「むりむりむり、絶対にむり。私、バカだから。そんなこと、全然、全然、わかんな~い!!!」
客将であるボクらに視線が及ぶ。
特に堂々と睡眠中のハナ姉には。
うん、何時もながら驚かされる。
「そちらさんは?」
「聖櫃を追ってきた者です」
代わりにボクが応える。
仰向けのヴィヴィアンさんも、
「相関図で言うと複雑な関係性ではあるけども、方向は決して交わらないって訳じゃない。現にこうやって彼女たちと共闘できている点で言えば、聖櫃をよく知っている部外者かもね」
ありがとう。
部外者を連呼して、強調してくれて。
おかげで、親王はすっかり警戒した。
「具体的には?」
ハナ姉は変わらず腕を組んで、パイプ椅子に座ったまま寝てるし。
ウナちゃんはヴィヴィアンさんに腰を掴まれて...
馬乗りになった最悪の選択に嘆きを加えてた。
「いあ、その前に白服って何者よ?!」