- C 773話 帰還と反撃 3 -
さて、一堂が会する場となって。
大鳥浮島が用意したのは、農場である。
山荘とか或いは、海岸線の海の家とかも、用意できなくはないけど。
そこまでお客様なのかと、親王の首が横に振られた。
メルリヌスさんの横にハミ出たお肉を揉みながら、
「彼女にとって身内はほんの一握りだと言うので、対応は塩とさせてもらう。施設の監房室でも良いというのなら、そう手配も可能だが――」
思わせぶりに話す。
メルリヌスは揉まれて恥ずかしそうに、じゃれてる様子で。
これ、魔術師さんが見たら、泣くんじゃ?
◇
用意された農場の納屋に長テーブルが置かれて、パイプ椅子が。
人数分の員数はあるけど、ボクたちだけじゃない数――「同席する主要人物を紹介する。懲罰軍団を率いる、大隅卿シェロクマー少将だ。(音の響は白熊を連想させたけど、立ち上がったのは羆のような人物。ま、丸い耳が頭の上にあって顔が犬っぽいのでたぶん......人熊族だと思われる)少将ほどの人物ならば、方面軍クラスも預けたいところなんだけど」
泉州王ひとりで説明してる。
紹介された巨漢の腕を触ってもいて...
なんと言うか。
こう、
ねちっこい感じの触り方。
羆の少将さんの方は「恐縮です」とか。
謙遜してる。
とりあえず整理すると。
懲罰軍団という特殊な傭兵部隊は、もともと泉州王の発案で生まれ、先々代の摂州王が統括指揮する仕組みとなってた。いくつかの奇妙な偶然に寄る事故によって、2代の摂州王は御隠れになり――年若い長孫・寧麒が軍学校も途中で王府の主人となった。
とりあえず。
元帥府みたいなのが無いから、懲罰軍団の籍は陸軍省の預かりとして。
最南方作戦に駆り出された。
南洋王家の脱出にも一枚かんでるし、亡命先の便宜も。
それでも待遇が良くならなかったのは、亡命政府の努力不足だった。
「南洋王国って消えたんじゃ?!」
ヴィヴィアンを押しのけて、ウナちゃんが問う。
彼女の上に馬乗りになってるんだが。
不機嫌そう以外のアクションは無い。
「いや、亡命政府が...たぶん、どっかにある。私たちも自分たちと同じルーツの国に対して非情には成れなかった。この辺りの差配は摂州王に任せてあるんだけど。身動きは取れなくとも、あの判断は正しかったと思っている」
ただし、政府としての体裁の為に用立てられた資金だが。
それをどう使ったかは藪の中。
今のところ、同王国政府は他国に借金しまくっているという。
返済の為の担保は元王国の地だとか。
それは治安回復させた国の総取りになるのでは?
「さて、我が王国は強大であるが」
倒す気か、或いは正す気なのか問うてみたいとか、そう親王が切りだしてた。