- C 772話 帰還と反撃 2 -
さて。
ボクらを運んだ先が、“大鳥”浮島だったのは驚きだ。
到着した途端に、ヴィヴィアンさんが自らの乳首を隠しながら「やだー、捕縛されるー!!!」と宣ったのを発令所にあるその他、大勢が目撃してた。無自覚だと思ったけど、どうやら少しだけ悪役公爵令嬢ごっこに負い目を感じてたようだ。
ま、普通の感覚もあったようで。
ボク的には嬉しい限りだ。
関係者にはちゃんと謝るように。
そして、試験管の中で死んだ裸のおっさんにも。
◇
「裸のおっさん?」
おや、反応が薄いようだが。
ハナ姉が彼女の鼻を指で弾く。
これクリーンヒットすると、乳首当てと似た痛みが先に走るんだよなあ。
「関係者各位にはちゃんと謝れ! この悪女が」
施設の設計者は別にあるというんだけど。
もともと魔力があって死に掛けてた公爵を試験管に詰め込んだのは、ヴィヴィアンさん本人。
ノリは軽く、動機はこれというものは無くいあ、あれは面白そうだからっていったか。
聖櫃に常識的を求めるのは、少し難しいかもしれない。
良心の呵責ってのがない。
あったら技術テロなんかしないわな。
「聖櫃らの知識がその土地の常識を覆す。少なくとも、別の世界では到達している水準に“ルート候補”として、口添えしているようなもので。格段に非難される覚えも無いんだけどね?」
と、ヴィヴィアンさんの口上が室内に響いたところで、泉州王が入室。
扉の傍にあって、首を傾げてもたれ掛かってた。
「メルリヌス嬢の義妹さんは、威勢があっていいね。ただ、ちょっと~白服の口上にも似ているところが、やっぱり元は同じ組織なのだなと思わせるよね?」
親王と恐縮ですと、小さくなってる総長との対比は、これ関係性かな。
聞いたところでは。
魔術師とは恋仲だったようだが...
NTRされたか?!
「そこの油まみれの坊や? 物騒なことを言うもんじゃあない。メルリヌスさんと私は純愛でね...」
すっと、メルリヌスを懐の中に引き寄せて。
優しく微笑むイケメンに早変わり。
で、総長さんもまんざらでもない様子。
これは吊り橋効果とかいう、アレか?!
「――ま、あれだ。東洋王国が誇る軍事拠点がひとつ、ウェーキ浮島にようこそ、諸君!!」
私が泉州王だと、自己紹介した青年が今後の中心人物である。
◇
大鳥浮島の軍港、潜水艦ドックには多数の軍艦が鎮座してた。
親王がうたったように、ここが“軍事拠点”であるのは紛れもない事実。
“湖の乙女”号から水兵以外を下艦させたのは、そういう場所でもあるから――聖櫃の総長と、布哇浮島との間にも密約・盟約があって同盟関係であるので、信は置いてある。感情的には、彼女の部下だから迎え入れてもいいという反面、やはり部外者と冷徹に接しなくてはと言う軍人としての使い分けがある。
客将としてのボクらも共に。
乙女号から降ろされた。
あ、乙女号ってのは改造を施した装甲車ゴーレムのネーム。
ネームドモンスター化させると、システム上で約1割のステータスアップが、加算される。
湖の乙女号の中の乙女号。
艦首に2基の魚雷発射管、トリガーハッピーなエサちゃん専用砲座があって、3連装回転式魚雷発射器も搭載した、水陸両用車両ってとこかな。居住スペースは小型の潜水艦なみに狭くはなったけど、縦に備え付けたロッカーみたいなベッドで寝ない分マシと言うか。
容量が無いので、斜めになって仮眠が取れる。
クルーだけでなく艦長から士官も含めた全員が、ロッカーベットであること。
これなら不満も出難いだろう。
くれぐれもお願いしたいのは。
ハナ姉には、おもちゃを持ち込んで欲しくないってことかな。
容量が少ないって事はロッカーは密接しているわけで。
ウィィィ~ン...ジジジ...ジシジジシシシィ~ン...
なんてシてるなあ的音は聞き取りたくない訳。
仮眠用のベットな訳よ。
やっぱ、ねえ。