- C 771話 帰還と反撃 1 -
元帥府自慢の最新鋭、航空母艦。
艦中央にエレベータ1基、アイランド型艦橋を挟むように、2基の装甲で覆われたエレベータがあってハイブリッドの複葉機が配置されてた。
今は未だ、2個中隊ほどしか用意できていないけど。
いずれは3個、4個中隊の100機装備という構想があった。
そんな艦隊の象徴が爆撃に遭っている。
「も、燃え...がっ」
旗艦にも激しい衝撃が来る。
操艦ブリッジの窓ガラスが割れた。
「くぅ、な、何事だ!」
泥酔してた白服もこれで目覚める。
右耳を手で拭って、
「ち、血が出てる?!」
驚くところがズレてるのは、訓練不足か。
戦艦の甲板にある水兵から、
「再び、ぎょらーい(魚雷)!!!!」
鼓膜がやられた白服からは「餃子?」とか漏れた。
――が無視。
伝声管に飛びついた、デッキブラシを持った下士官は――。
「ブリッジより機関室! 指揮官不在なれど、構うことは無い機関全力始動!!」
船が沈んでは目も当てられないし。
乗艦している士官は極わずか。
動ける者だけで戦うのは兵士の務めって、ね。
◆
一方、ボクらを追尾してた訳じゃない偵察艦隊の前に、同型のような艦艇が現れる。
探照灯を点けて、周辺海域の警戒ほどじゃなかったけども。
奇妙な不審者が度々目撃されてた海域でもある。
例の怪鳥ゴーレムの事。
艦橋にて優雅な珈琲タイムにある艦長さまが、だ。
航海士の尻に値を点ける遊びに興じてた。
付き合わされてる雰囲気でもない航海長とか。
ニヤニヤと陰湿な世界。
さて、ほんのちょっと慌ただしくなったのは。
『ごきげんよう』
探照灯のモールスで挨拶してきた同型艦。
128ミリ連装砲をハリネズミのように搭載させた、軽巡洋艦。
ベースが元帥府と同じであれば、前級の7000トン型“クラトス”との類似があった。
が、真横まで接近を赦して後、別物だと知る。
いや計画案を見た者があれば気が付いてたかもしれない。
全長179メートル、全幅20メートルという船体を持ち、まあ。
横に並ぶと、案外大きいなあってのが印象に強く残る。
艦首に背負い式で約8門4基の砲塔があって。
片側であると、3基がぞろっとこちらを向いている訳なんだけど――何気に額に浮いた嫌な汗を拭ったところで、128ミリ砲が火を噴いた。
およそ毎分18発もの灼けた砲弾が同型だと思ってた船から吐き出され。
至近距離と言うのもあって信管のスイッチが入る前に艦構造物を通過していった。
ま、右舷から入った砲弾は、左舷40、50メートル先で爆発してたので被害が全く無いわけでなく。
過貫通した御蔭で、砲撃した側も無傷だったようだ。
「だ、ダメージコントロール?!」
叫ぶ艦長と艦内のギャップ。
デッキで仕事してた人々は勿論、肉塊になってるし。
艦内の柔らかい装甲内でも。
語るに及ばず。
「被害甚大!」
鳴り響く黒電話に、叫ぶ声。
艦橋より後方は穴だらけになってたんだって。
◇
さて、ボクらの潜水艦は、魔術師さんの誘導に従って惨状の10キロメートル先で浮上。
迎えだという船に曳航されるがまま、引っ張られることになった。
微速前進してただけで機関室のエンジンがイカレた訳じゃないとは、説明したんだけど。
ま、要するに。
またふらりと何処かへ、行かないようにするための処置とか。
こりゃ、ヴィヴィアンさんが信用されてないな。