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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1896/2354

- C 769話 マリアナ群島 追撃戦 9 -

「あらら」

 わりと情に厚いと知る。

 黒蜘蛛のプロフィールを眺めて、少女はこくりと頷く。

「それ、こちらで確保いたしましょう。幸い、みなさん本国勤務ではない模様ですし...」

 かっと見開く黒蜘蛛。

 いや、冷静さを取り戻して、鼻を鳴らした。

「確かに個体性能が高く、本国で遊ばせるには惜しい人材ではあるだろう。が、だからと言ってボクを陸諜ガーデンに留まらせる為にとった人質を? 前線で使ってるのか」

 バカだろそれって声が漏れる。

 不知火の方は、首を小刻みに振ってた。


 スパイの養成には金が掛かる。

 試験管ベイビーなら猶更だろう。

 黒蜘蛛から優秀な個体を作り出す計画――成功したのだ。

 そんな個体が複数いるなら、遊ばせる気はない。

「ほら、お友達は組織を分かっている」

 黒蜘蛛は、キツイ視線を不知火に向けた。

 いままで一緒に居ただろう。

 そんな演技をする必要はない。


 もっとも、自身がよく分かってる筈だし。

「そうそう、これはお約束して頂くための前金のような...もの。先の南カリマンタン島での一件、そちらの手駒がひとつ、失われたのではないかと察します。共和国の可愛らしい子犬たちが、遊び疲れた様子でしたので、ね。遊び道具の方は回収させてもらいました」


「それが、何だという!!」

 ちょっと逆鱗にふれたかも。

 でも感情が残ってるのなら。

「共和国には禁断の技術があるようでしてね、ま。黒蜘蛛さんのように優秀な個体を試験管でではなく、魂の転写を行えば、優秀な個体が復活するという話です。あ、これ企業秘密ですので他言なさらぬよう......で、私たちも似たことが出来ると言えば? ご理解は早いですか」

 ご理解も何も、黒蜘蛛の顔にぱっと光が差す。

 死んだ子が蘇るという。

「ランディにまた会える?!!」


「ええ、今はリハビリ中ですね。うちの義兄にいさまが付きっきりの稽古もつけられています」

 稽古?

 まさか、変態にするための。

「ランディは素直でいい子なんだから!!」


「ですから、ご本人。口も満足に回らぬ頃、絞り出すようにこう請願したんです『姉弟たちにも負けない腕と知識と力が欲しい』と。私たちが“甲我衆”だと理解した上で、頼まれたのだと理解致しました。...これも何かの縁ですし、私たちもタダというのは少し...。欲張り過ぎと言うか、彼女の心に枷を掛けてしまいますから、使()()()よう鍛え直して差し上げようかと」

 スパイとしての技術は、他の個体と比べると劣ってるところがあった。

 親の目からすれば、クローンであれ可愛い我が子。

 スパイに成れなくてもと思った事がある。


 当時の黒蜘蛛かのじょに突きつけられたのは、

 “使えない”個体はリソースに戻すという決断。

 陸諜開発部の見解で、組織全体意見はちょっと違った。

 仮に全体の意思が聞ける立場にあれば、彼女も鬼には成らなかっただろう。

「どうしますか?」


「受けよう」

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