- C 765話 マリアナ群島 追撃戦 5 -
「対艦砲撃戦よ~い!」
ケースメイト砲郭のガンデッキに、独特な抑揚を持つ言葉が飛ぶ。
木箱に収められた砲弾が各砲座に並べられて。
「榴弾に換装よ~し」
「換装よ~し」
てな具合に、つぎつぎにあの抑揚が繰り返される。
射撃よ~い。
射撃かい~し...まで続くんだけど。
これのリズムがはじめは聞きなれない分、気持ち悪いというか。
くすぐったいんだけど。
馴れると、自分でも何となく叫びたくなというか。
ま。
不思議。
◇
今までの、そう。
怪鳥ゴーレムを逃がすための砲撃は、訓練弾頭に装薬を詰め込んで撃ち出してたよーな。
そりゃ、当たればタダでは済まない運動エネルギーがかかってる。
やわらかい装甲ならば、あるいは過貫通も。
人に当たれば、ミンチ。
あ、いや。
ハンバーグ喰えなくなるなあ。
対艦射撃でも、直撃は避けて砲撃。
そりゃ、主役がウサギ艦長らじゃないからだ。
誰か?
◆
“大鳥島”の浮島へ、聖櫃の暗号文が届く。
島のコテージに身を寄せてた、泉州王とメルリヌスの下にも暗号文が届く。
もっとも、これは総長だという彼女の試金石。
解けても解けなくとも、大勢に変化はない。
斥候い出ている潜水隊からも、同様の接触があったことが伝わってたからだが。
「これは...」
「良くない事か?」
メルリヌスは首を横に振る。
むしろやや、雪解けのような笑みが見えた。
「妹からのようです」
ほうって。
ボクも同様です。
「“湖の乙女”号がこの付近に。元は、“布哇”の魔術師と合流すると...説明してくれていますが、潜水行動が長く」
で、紙片が彼女の足元にひらり。
泉州王が拾い上げても、読み方が分からないからさっぱりだ。
「で?」
「もう2週間ちかく潜っていると」
大丈夫なのか?!って声をかけてやりたいのをぐっとこらえる。
それは焼け石。
技術と知識のレベルが違うのは、いやというほど分からされている。
陸上を疾駆する装甲のお化けの構想は前からあった。
けれども、きっかけにたどり着く前に計画が白紙。
この繰り返しだった案件を、彼ら聖櫃は見事に復活させたのだ。
こちらの想定よりも高い位置にまで押し上げて。
戦車ばかりでなく、
軍艦もだ。
鎖国をしてたわけではない。
結果的に交流が無かっただけ、は言い訳なのだろう。
工業レベルのテコ入れによって、時代錯誤的な軍艦が1世紀前倒しに進化もした。
恐らくは、今や東洋王国は世界最大の潜水艦大国だろう。
ゆえに分かることがある。
作戦潜航での連続潜水時間は、そう長くはない。
「いえ、失礼しました。取り乱したようですね...私たちの技術をもってすれば、3週間の連続潜水は可能なんです」
「それは、....理論上のでは、ないのか!!?」
追い打ちではなく。
いや、やっぱり追い打ちかも。