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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1889/2354

- C 762話 マリアナ群島 追撃戦 2 -

「ちょ、鳴ってますよ!! 大佐殿!!!」

 異変に気が付いて、下のデッキを磨いてた水兵が飛び込んできた。

 激しい橙色の明滅。

 聞き取れない雑音。

 空虚の中に混じる、泉州王という名。


 あ、これ聞き間違いなんよ。

 泥酔している白服には()()聞こえたらしい。

 まあ、彼の中ではどう感じてもチカチカ、ぐにゃぐにゃな世界だった筈だ。

 そんな訳で反省点だけが、膨らんでいく。


 何せ、呼び出しである明滅が、ティンカーベルに見えてたんだし。

 そんな話が戦友らに出来るわけもなく。

 座乗している戦艦にある、船医のカウンセリングに通う日々。

「俺の毛が、また抜けまして」


「ああ、それね。冬毛から夏毛に代わる時期だろ? 安心しなさい、円形脱毛はしていない。むしろ、ブラッシングと蚤取りなんかを獣医に尋ねた方がいい」

 なんてやり取りも、あったような。



 さて偵察艦隊だけども。

 後方に置いた中継艦を通して、本隊に連絡はした。

 丁度、どんちゃん騒ぎ中の艦隊にであるが。


 いや、そもそも。

 偵察艦隊がそんなことを知る筈もない。

 無線は届くが、

 無線が戻ってくる気配がない。


 中継艦が拿捕されたからだが。

 あの雑音にまみれた聞き取りにくい“緊急信号アラート”がそれだ。

「誘われて()()みれば、中継艦とは面白い」

 薄汚れたシャツにをたぐしあげて、腹の肉を掻く男。

 下顎から立派な牙が生えた、ワニ顔。

 角は無し。

「上空の友軍機より、逃走艦の狙撃は完了したと」

 数キロ先の話だろう。

 黒い闇の向こう側に、灼けた空があるように見える。

 降り注ぐ曳光弾雨も恐怖だったけども。

 海が燃えるのも鳥肌が立つ。

「それ海風が沁みるんじゃ?」


「それも感傷的だよな? オラぁには、そんな詩的感情はねぇよ。...っ、まあ。あれだ、久しぶりのシャバの空気だきゃんよ、いっぺい食って呑んで、そんで屁でもひねぃてえ気分だった、そんな話をだな」

 言ってる傍から強烈なガスが撒かれた。

 戦友たち、部下からは「親分へやがしらがマスタードガスを撒きやがった!!!!」ってな大騒ぎで、被ってた軍帽を扇よろしく左右に、上下に叩いてた。

 駆逐艦の捕虜たちも、

「目がーッ!!!」

「息が、喉が灼けるぅー!!!」

 と、息もぴったり。


 やはり、ノリは大事だよ。



 さて。

 “湖の乙女”号にカメラが戻る頃。

 ソナー士より、

「スクリュー音多数、四方からです!!」

 なんていう絶望的なお知らせに、だ。

 皆が頭を抱えてた。

 で、

 続いて、通信手の手が挙がる。

「聖櫃暗号により短いメッセージが!」

 ざわつく発令所内。

 いつも以上にふんぞり返る、ハナ姉――内心ではかなり焦ってる。

「ふふ、わたしの声が届いたな!」

 意味深なことを呟いたけど。

 これは彼女にとっての賭けだった。

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