- C 757話 マリアナ群島 遭遇戦 7 -
自衛なら自衛でもいい。
ただ、その自衛は単に先伸ばしにした、撃墜って結果の悪あがきにしかならず。
ここで撤退が可能であればワンチャンス。
見逃してくれるんなら、弾薬すべて打ち切れる覚悟がある。
が、現実じゃあ。
今までのある差のツケが回ってきたわけで。
そろそろ補給したいところだ――マナ鉱石の予備にも手をつけているから。
例の如く信心深い少年兵が、皆の無事を祈願してた。
さて、怪鳥ゴーレムの高度が僅かに上がる。
その様子を見てた“コウテイ・マンタ”から無線電信が飛んできた。
公にされてる欧州連合軍のオープンチャンネルでだが。
キルダさんらが何で知ってたかは、ハナ姉にあとで問い質そう。
で、慌てたのは怪鳥ゴーレムの方。
だって、こんな太平洋の、海だけしかない世界にだ。
欧州連合だって名乗る友軍に出会えたから。
そりゃ、まあ。
探すわな。
『当該機は君らの上空にあるが、探すな、そして見るんじゃない。こちらは作戦行動中である!! しかし、友軍の危機に際して文字通り、高みの見物も“信条”が痛む故。ここに我らが手助けしよう...当該海域からの速やかなる離脱の一助とされたし』
まあ、そんな内容の暗号文だった。
オープンチャンネルだからって平文で通話したら、怪しまれるから。
最低限の礼儀のような。
まあ、そんなとこ。
信じたかな?
なんて、キルダさんは思わない。
それでも離脱しないなら、構わず射撃しただろうしさ。
怪鳥ゴーレムが台州方面へ機首を向ける。
『離脱の助力に感謝する!! どこの誰かは分からんが、ありがとう』
悪い気はしない。
さあ、存分に撃ち込んでおやりなさい。
◆
“コウテイ・マンタ”級の舷側砲郭には、対艦スケールの155ミリ単砲がある。
こいつはそうだなあ。
この時代でなら、軽巡洋艦の主砲クラスだと言うとちょっとは頼もしいだろうか。
これが12門あって。
集弾補正が各砲郭ごとに行えるから、2射目以降の火力は期待値が格段にはね上がる。
いや、2射目が必要かどうかも。
そういう精度の対艦砲ってことだが。
怪鳥ゴーレムの帰路を見事に避けて、射撃された。
偵察戦隊側の被害は今のところ見当たらない。
射撃しているサイドが雲の上からとか。
考えられなくもないけど。
赤く灼けた砲弾が雨のように降る。
速射モードによる精密射撃ではないが、マーキングした怪鳥には当たらない補正は掛かってた。
これがボクたちの技術だが。
ヴィヴィアンさんらに見せるのは早計だった、か。
「な、なにこれ?!」
どこからの射撃ってはしゃいでて。
まだ浮いてたカメラブイの本体がぐるんぐるん回ってて。
波間にもまれて気持ち悪い。
そうだ、あれ。
このブイ、真上は見えないんじゃなかった?