- C 756話 マリアナ群島 遭遇戦 6 -
さあて。
偵察部隊が目撃したのは、例の怪鳥ゴーレムだ。
まだ、飛んでたんだっての方が驚きで。
あっちこっちで騒動のタネになってた。
いわゆる迷惑なご近所さんポジの一行ってなるか。
南西海域の“琉球”ドームから上がった、水上器から追撃を受けたのも束の間。
これらの少女たちを唐辛子爆弾で撃退する。
『はーはっはっはー!! 子供は寝てろバーカ!!!!』
口上がもう。
目を擦って、鼻、口を両手で覆った少女たちがバラバラと堕ちて行く。
その高度...死にませんか?
まあ。
そんな事をしでかした、怪鳥に二つ名が贈られる。
名誉でも不名誉でもない。
彼らが礼を尽くして受け取った訳じゃないから。
その名:“金羽の荒鷲”
方々で、撃ち落とされた少女、少年たちが名付け親。
自分たちから空を奪った怪鳥。
翻した翼が西陽で金色に輝いていたところから浮かんだという。
そのゴーレムは自由だったという。
ボクが思い描いたとおりに翼を広げ。
空を駆ける――美しかったろうなあ。
◆
その鳥が戻ってきた。
もう体中、傷だらけで。
どこまで飛んで行ったんだよ。
カメラブイの映像を盗み見ているボクは、少し嗤ってしまった。
で。
発令所のみんなと同じように、感じる。
「「また、こいつらか」」
と。
難局なんて去ってもいないけど。
まあ、どちらかと言うと――おかえり――ってとこかな。
腐れ縁だわ。
『飛行班長!』
怪鳥ゴーレムの機首に居座る操縦士ふたり。
交互にパッドを握って、仮眠、休憩、変態機動で空中戦もして。
この特殊機に乗り込む前から、ベテラン過ぎるほどの技量だったけど。
より一層の技術を身に着けて。
「ああ、見つけた! 俺たちの本命だ!!!」
格納庫から親指を上げて、感涙。
囮魚雷に騙されて、迷子。
向かう先々で、東洋王国から手厚い歓迎を受けてきた。
見失ったと思ったら。
大精霊の消滅痕が観測されたんで、痕跡をたどってここまで来た。
ああ、なんちゅう感度のいい観測器、積んでんだよ。
歓声が上がるのは良い事だと思う。
眼下の敵戦隊も似た感じで、にぎやかな雰囲気。
そりゃお尋ね者が。
『ちょっと厄介な話が』
黒電話をスピーカーに。
「何が厄介か」
『...っとですね、こちらに俄然やる気な船団が。見るとこ、偵察軽巡洋艦が混じってまして』
彼らも少しは喉がなる状況へ。
潜水して隠れてるボクらの為の爆雷はあれど。
水上器の撃退には武装の温存で、胡椒やら唐辛子なんかの食材で代用して。
彼らは貧相なレーション暮らし。
何度も耳の穴をほじって、聞き返してた。
「ぶ、ぶそう...は?!」
『機首の20ミリが100発程度。あとは、翼下の30ミリ...残弾が携行の20%以下。格納庫に備砲の105ミリ短口径があると思いますが? 装弾数はもっと心許ないと思いますよ』
聞きたくなかった。
そもそも105ミリの展開は、無理に乗せた索敵用備品のせいで稼働不可に陥ってて。
解決案もない。
「ちぃ、詰んだか」