- C 745話 集え、我が猛者ども 5 -
内務省内で発足した特別高等警察は、先述のとおり政治犯やスパイ活動の他に、王国の意向に従わない者を罪状にあやふやな点があろうとも、現場判断でどんどん捕縛する権利が与えられている――という、どえらい横暴な組織で。
発足こそ内務省だったけど。
結果的に、組織まるまるが後宮府へ、異動させられてた。
これが後宮府の姿だ。
宦官たちが市中へ出歩くことが適わない。
また、後宮府の私兵“屍”(=後宮内で重罪に手を染めた宦官を兵とする、懲罰部隊)と、女王の禁軍が手足となって、王都内で活動するという異常事態となってた。
奥の院の出入りが赦されている、御用商人を通じ。
女房のひとりが実家に託した紙片――後宮にあがった姫さまがたや、女房や侍女たちが戦犯として盗られられ拷問を受ける日々。明日か明後日にもわたしの番が回ってきそうです。お父さま、お母さま...先に逝く娘を親不孝と嘆かないでください――ってのが発見されていた。
まあ、心配になった両親は大枚をはたいて、貴族に泣きつき。
後宮府からは娘の形見とする品が返却された。
紙片が真となったわけだが。
◇
布哇浮島にある魔術師の下にも、そんなきな臭さが届いてる。
届けてきたのは袂を分かってる筈の白服どもだ。
カイザー・ヴィルトの開かずの間に眠る技術の開示が目的だという。
図々しい。
「お前らにタダで差し出すものはない!!」
巨鳥の前には、純白の鎧を身に着けた者と。
対する東洋兵士千人が対峙してた。
「魔術師どの? この兵力差でもそんな大口を???」
その兵力は借り物だろと、トーンを下げる。
白服らは総長の掲げる理想に共鳴したふりをして、何もかも奪おうとしていた。
その足掛かりとして、御しやすい連中を引き込んだわけで。
純粋に白服であるものは数人しかいない。
その彼らが肩を竦めて、気怠そうに嗤った――借り物であろうと、兵力は兵力だ!!!とか。
「そう言うのはだな、相応の実力があるやつの台詞なんだよ。お前らなんて、聖櫃の未解明な技術でマウントを取らなければ、コソ泥以下でしかないだろうが!!!」
魔術師は彼らを挑発している。
ライフルを構える兵士たち。
一列目は、片膝を突いてしゃがむ。
二列目は、半身に肩幅で直立して銃を構えてた。
三列目と四列目は装填準備中である。
「撃たないとでも?!」
「撃って収拾がつくならやってみるがいい」
魔術師が壁となっている自軍兵の前に出た。
対峙する聖櫃の兵はサブマシンガンのようで...
白服らはそのサブマシンガンも欲しいのだ。
半ば、諦めたような。
或いは残念そうに...
「本当にあなたは愚直だ!!」
ダダダっと銃声が響く。
布哇の湿気多い空気でも鈍く広がる破裂音だった。