- C 743話 集え、我が猛者ども 3 -
連絡艇は、エンカウンターの格納庫へ収納された。
思った以上に広いし、組み立て式の航空機が20機ちかくあった。
「これは!!」
聖櫃の総長メルリヌスは、たったら~な走り方で航空機に飛びついてた。
発動機回りや装備品を熱心に見てる。
整備兵に「しっしぃー」なんて煙たがれても食いついて放さない感じ。
「班長ー!!」
この娘が邪魔でーって泣き言が。
流石に親王は大笑いで。
涙を浮かべてた。
◇
喰らいついて放さない雰囲気は、何もメルリヌスだけじゃなく。
沿岸警備局の方もだ。
信用したか否かは然程、重要ではなく。
軍艦が1隻で単独行動していることに、更なる追及の手を伸ばしてきた。
「...ってもなあ、訓練中のことだ。王都から政府筋の将校を受け入れるのに、馬鹿正直に航路計画書は出さんだろ? それでなくとも先の“革命騒動”はわりと有名だったと記憶しているんだが、ね」
学生運動にいささ手を加えられた、大規模な情報流出事件。
元帥府の聯合艦隊も、これらの御蔭で“南方作戦”に支障が出ていた。
「准将閣下の懸念も理解できますが」
結局、警備隊を乗艦させて臨検を受けた。
ま、全艦を案内したわけじゃなく、するっと流して食堂に通した。
それでも、ガラの悪い軍人が乗ってるのだけは理解させてある。
「さて、どうも空ぶっているようなのでひとつ、聞き捨て成らない台詞がありましたよね?」
平文で交信した時のものだ。
ニマニマしている警備隊。
かれらを束ねる班長も、似たように勝ち誇っているようだけど。
一筋縄では。
「“殿下”とはどなたが乗られてたので?」
連絡艇にだ。
泉州王とメルリヌスは今も格納庫にある。
出るなって、懲罰軍団の団長自らが足止めしてた。
「ふーん、そうきますか...どうしましょう?」
袖に声を掛ける副長。
やれやれと小芝居ぎみに、佐官の将校服の青年が現れた。
軍帽は脇に挟み、茶褐色の革鞄を提げた者。
「摂州王殿下?!!」
呼ばれた青年は、バツが悪そうに微笑んでる。
額の汗は体質から。
大の汗っかきなのだ。
摂州王の長孫にして、齢17の青年将校。
陸軍士官学校を次席で出て、貴族のわりに泉州王と同じく2年間の実務経験がある。
極めて変わり者の“殿下”だ。
「いやあ、まさかあんなに必死に追ってくるとは思いもしませんでした。ボク、いえ私の視察内容は公にされることはありません。警備局の方々なら重々承知ですよね? で、申し訳ないのですが...あんな怪しい申請となったのですが」
恐縮ですなんてセリフが、使い慣れてるのか端々に出てくる。
苦笑まみれの摂州王スマイルとでもいうか。
非常に可愛らしい笑みを浮かべる。
きっと苦労人なのだろう。
「本当に殿下ですか、アレは?」
やっぱり信用してない。
疑うのが仕事だから仕方ないけど。
「あちゃあ、ボク...いや、私、信用無いんですね...恐縮です」
何を恐縮してるんだか。
やや耳障りな言葉になってくる。