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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1858/2367

- C 731話 王都脱出 1 -

 泉州王に手を引かれた総長らは、王都の下水にあった。

 もう少し地下を進めば、貧民街から地上に戻ると告げてあった。

「なぜ、地上へ?」


「あ、いや。このままでは匂いが体に染みつくだろう? 女性にそれは、うん、良くないだろうなあという私の勘だ。...私はこの街が発展するのと時を同じよう、重ねてきた者だから。――この香りは嫌いではない。ま、好ましいとも思えんが、鼻が曲がるほどの汚泥のソレも我が国なのだと...知っているものだから」

 総長を見る。

 華奢な身体に、肌の白さ。

 髪は手入れされた艶のある長髪である。

「これは、後宮で椿油を」

 普段は殆ど手入れをしないと断った。

「だが、それでも大事にされてるだろ?」

 名は?と、問う。

 後宮では“ひじり姫”と呼ばれてたけど。

「メルリヌス...」

 少し儚げな笑みを浮かべる。

 その意図に親王は即座に応え、

「ほう、マーリンか」



 親王の言葉通りに、下水道の出口は貧民街に繋がってた。

 メルリヌスは不思議そうな表情だ。

 泉州王と言えば、現女王の甥? 叔母?にあたり。

 貴族連中の中でも最高位の冠位を持つ人物だが、同時に男女の色事にふしだらなんて悪い話も。

「うむ、確かにすべて事実だから不潔だと、罵られても...うん。仕方のないことだな」

 烏たちは、そんな親王を慰め始める。

 なんだろう慕われてるのかな。

「不思議ですね!!」


「そうかい?」

 だって、貴族たちは疎ましく思ってる。

 いや、もっと言えば失脚してましめばいいとか思ってる。

 だから自然に蔭口が出る。

「摂家を差し置けば、今のところ元帥府を取り上げられた...ただの正一品の大都督、左将軍にして“金色の魚符”を持つ禁軍の長、公爵の老害といったところか。長く軍権を手放さなかったから、酷く恨みを買ったもんだろうなあ...」

 って暢気に嗤ってた。

 これが空笑いだとは気が付かなかったけど、魚符の返上は都度、迫られてた。

 泉州王が持つにいたるのは、彼女が姪っ子を裏切らない性格だったから。

 太皇后(=女王の母親)、彼女の姉も後ろ盾になってくれてた数百年――そんな強い家族の絆に綻びが生じた。

 聖櫃から白服組を受け入れてからだけど。

「だからって君を恨むのは筋違いさ」

 貧民街の人々は、親王だと理解すると素早くトタン屋根の家屋内に匿ってくれる。

 見回りの兵士たち相手に、のらりくらりといなす様も驚くべきこと。

「確かに白服の介入によって陰と陽の環境の変化はあったろう。だがしかし、それまでも暴発寸前だった状況を見れば、だ。誰かが何かしなかったら、後宮府に飛び火して、皇子たちに母の断頭台を見せていたかもしれない。或いは...」

 メルリヌスが制止した。

 そんな怖い事を考えないで欲しいと、懇願。

 少なくとも、人質だったかもしれないけども、後宮では常に気を掛けて優しくしてくれた人々だ。

 ただ、皇子の妻に成れと言われた時は貞操の危機を本気で感じたらしい。

「いや、なんか...ごめんね」


「いえ、」

 もう過ぎたる事。

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