- C 726話 台州よふたたび 6 -
「銀レベルのハイクォリティってとこか」
こぶし大の粘土で、平均値を越えさせられる限界点はせいぜい1kg未満。
やっぱりコストが見合ってない。
いや、むしろ。
HQの魔王領産だからこそ、銀レベルでHQも超えたと言える。
「いやあ、やっぱ勿体ないっすね」
頬の稜線が潰れるまで、顔を拭う。
ボクでも勿体ないと思う。
「ただ、同じマイスターでもマルさんだからこそ、そのレベルに到達したとも言えなくはないかって。あなたの腕は至宝ですんで、一般的な錬金術師はこうは行きません。ですから皆、無謀なことをしないんですよ」
値崩れが起きる可能性は、ボクだから...か。
◇
さて。
粘土の品質変化に苦慮してた訳だけども。
エサ子が、自身のストレッチ中に出前を頼んでた。
ぴっちぴちのウェアと、肌を滑り落ちる汗をかいた小さな体。
ボクからしたら、ひとり何?成長してんの、だけど。
皆からしたらだ。
ボクと大差ないらしい小柄さ。
そんな彼女の出前の量は半端なく。
特急で来た自転車は...
ははっ、4輌かよ。
「どんだけ喰うの?」
「動いた分だけ、摂取カロリーを」
豚足を差し出してきた。
いや、ボクはその見た目がダメで。
「そ」
食事中は口数も、対応も塩になる。
エサちゃんらしいんだけど。
ん? 待てよ。
出前か...。
◇
「魔界から、か?!!」
ハナ姉の反応を見る。
彼女に投げれば、問題点の解決が早まるから。
ボクの頭脳代わりに。
「いあ、問題は無いだろうが...」
「が?」
「上の連中は拗ねると思うぞ。利用するのは有料のペンギン急便なのだろう? あの空飛ぶイワトビペンギンみたいな眉毛の濃い、動物の癖に異様に精悍な顔つきのイケメンなペンギン。同じ鳥類だったら...うむ、間違いなく一戦いや、一晩賭けて夜の運動に付き合ってもらいたいと思わせる、そんなペンギンだろ?」
っ、ハナ姉からそんな話を聞くことになろうとは。
男は無理だが、オスはいいのか...
いや、卵を産みたいの???
待って、待って。
理解が追い付かない。
「...ま、冗談はさておき。魔界からの超特急便だと何日待つことになる?」
その辺の調べは抜かりないよ、ボク。
提案するんだから、さ。
リサーチ済みさ。
「2日とかからないと思う」
「ダメだな。却下だ!!」
即断された。
なんでって言葉は、ボクの無知から出る。
「無為な時間を2日も賭ける意味がないって事だ。だから、上の連中が拗ねると言った! 彼らの方が早く物資を届けてくれるし、そもそも懸念は...輸送手段なのだろう?」
あ、うん。
空飛ぶイワトビペンギンらが低空飛行で飛んできても、バレそうだし。
粘土の数十トンでも料金が跳ねる。
とりあえず、試しにウナちゃんへ具申したら...
即断で断られた。
「まあ、そういう事だ」
これは義姉の忠告通り。
半日で解決できる上の連中と要相談となって――
「マルが自分で考えるようになったことは、わたしも嬉しいぞ」
と、ハナ姉が理由をつけてボクを吸う。
これさえ無ければ、まあ。
いい姉なんだけどもなあ。