- C 724話 台州よふたたび 4 -
「南蛮の自由都市連合で、“クアンタン”。音も似ているから聞き返されるかもしれない。が、まあそこは押し通すほかないだろうな」
一般的には“南蛮国”ってのは成立していない。
自由に交易して、自由に生存権を獲得している海賊や悪党たちの縄張り、自由都市連合――それが南蛮と呼ばれる実態だ。それぞれの都市は王国領の中に存在するんだけど、街の成立が無法者のたまり場から発展した経緯がある以上、当局のまあ、お目こぼしとか外交とか。
よくわからない見えない権力で自治権の獲得に成功してた。
で、そんな物騒な街へ行くという。
当然、軍は反対するけど。
「政情不安の国の脇で大集結するってのの方が怖いんですよ」
って逃げた。
潜水艦隊司令部のクリスマス島は激怒。
本国は無反応で。
ま。
先行している怪鳥ゴーレムには謝罪が送信された。
◆
さて、ボクたちは台州の港湾施設のひとつに滑り込んだ。
潜水艦母艦というのには少し不出来な貨物船。
もともとそんな使い方ではなく...
いや、まあ。
細かい事は言いか。
「ゴーレムの...オリハルコン粘土は仕入れが難しかろう?」
魚人の翁が零す。
確かに、台州だから何でもある訳じゃあない。
が、この街には――。
施設の端に停泊してた地にレトロな作業車が近寄る。
ヘッドライトは3点で、明滅してる。
モールスかなとも思ったけど...
意味が分からん。
「あれは、悪路過ぎて上下に揺れてるだけだ」
ハナ姉がボクの耳元で息と声を掛けてきた。
うわ~ 背中がゾクゾクする。
「車、止まった」
ウナちゃんも舷側の縁に身体を預けて。
ぽっこりお腹が手すりに乗ってるようにみえる。
うーん、この子、運動不足のような。
「あれは幼児体形」
まただ。
また、ハナ姉の息が。
「――船の通信士から、台州に居る友人に連絡を入れて貰ったのさ」
「友人?」
別に忘れた訳じゃない。
心当たりがないような気がするだけ。
「部長ー!!!」
ウナちゃんを見て、
役職を叫ぶ変態。
はて...
女装癖でくねる雄...
「アリスさん?!」
「げっ?! マ、マルさんも居るんですか???!!!!」
物凄く距離が取られた気がする。
なんでボクの印象が悪くなってるの。
◇
台州の状況把握。
現在、北方に建国された“燕”王国と国境を境にした玄関都市へと変化し。
かつてのような異文化交流圏みたいな雰囲気は無いんだとか。
また、当然、貿易港としての旨味もない。
ただ、外国租界は生きて機能していることから、魅力半々らしい。
「物資は...かき集められますか?」
産業スパイ組織“甲我衆”の棟梁ってのが追加設定された、アリスさん。
懐かしい顔ぶれではあるけど。
生き分かれた妹に頬ずりでもするような、アリスさんとウナちゃん。
ま、ウナちゃんの方は会いたくは無かったようで。
握られた手や、触られた頬を消毒してた。
「アロガンスよりも苦手」
まあそんなに邪険にしなくても。