- C 722話 台州よふたたび 2 -
中欧が飛ばしている、怪鳥ゴーレムは情報収集を得意とする特殊個体だった。
特務機関で設計され、さらに建造された試作機でもあるけど。
と、同時に実戦配備レベルの装備運用が可能だったわけで。
ボクらは、聖櫃のオーバーテクノロジーだけに注目してたけど。
この世界のオーバーテクノロジー持ちは、彼らだけじゃなかったという訳だ。
過去からのツケに今、肩を叩かれた気分がする。
◇
「これらの計測器が吐き出すデータ通りなら」
不出来な液晶画面だけど、モノクロの画像よりかは幾分かマシなカラー映像。
900色未満といったところか。
まあ、それでも奇麗な画像であることは間違いない。
「っす~ ああ。そうだ、やつらは台州に逃げ込んだ。今は熱源を落としてるようだが」
貨物船に潜り込む前に遭遇したのが不味かった。
あの時、撃ち落としていれば。
いや、そんな「もしも」は言っても無駄。
出来なかった時点でOUTなわけで。
「こちらは奴らの航跡を手に入れたようなものだ。たとえ、水中に逃げ込んだとしても、見失うことはしないという事だ!!」
機器の操作には魔法士たちの魔力が必要で。
もともと複数の班長とともに若い少年魔法士も乗り込んでた。
そのすべてがそれぞれの機器操作に携わってた。
今のところ完全自動化は難しく、やっぱり大半のレベルでは人の力が必要。
「無補給でどれだけ飛べるんだ?」
機首側へ声を掛ける班長。
マナ鉱石とのハイブリッド魔導力炉が採用されている実験機。
「機内から手動でなら魔導電池の交換次第でたぶん、20日か。魔導電池の調達が可能ならば未だ幾分かマシかも知れんが」
機体に充填されてある電池残量だと7日は飛べそうだが。
格納庫の乾電池はさほど多くもない。
やっぱり一度は下に降りた方がいいって結論になる。
「悔しいがな」
降りたら整備を受けるだろう。
その間に台州を出られたら、追うのには相当な苦労が必要になるだろう。
あえて東洋王国領内に入るとは思えないけども、だとしても空に上がったその瞬間に見つけられる可能性は極めて低い。
「なあ、誰か信心深いやつはいるか?」
機内の誰かの他愛もない会話――今から降下しようって流れから出たんだけど。
「あ、はい! 自分が、その正教会に入信してて、はい」
「じゃあ、俺たちの分まで祈ってくれ」
「何を、でしょうか?」
決まってるだろ、俺たちに砲撃かましたバカ野郎たちをよ。
次に空に上がった時...
神の人差し指で指し示してくださいってな――なんて。
啓示なんてそうそうない。
これはただのおまじない。
陸に降りても、信心に賭けて欲を絶ちますとかなんとか。
そんな感じの願掛けに過ぎなかった。