- C 716話 共同戦線 16 -
“湖の乙女”号と名付けられた潜水艦の隅々とはいかないものの。
アロガンス自身は、ほぼ自由に動き回ることが出来た。
とは言っても、保安局員という腕章のある屈強な男たちに囲まれてだが――「あ、ちょっとその弾薬倉の中を見たいんだけども?」艦首・魚雷発射管室の際での攻防。
アロガンスが、オウル級に乗ってた時でも。
異邦人の客人が...
『そこの魚雷は何本、一斉に撃てますか?!』
とか訪ねても答えはしなかっただろう。
今、彼はそういう不毛なやり取りを仕掛けてた。
「見せると思うか!!」
「いや、俺なら見せないと思うけども。聖櫃らは見せたがり屋なのだろ?!」
偏見じゃなく、挑発だろう。
いや、少し以上に偏見がある。
魔王領で大暴れしたのだって、自分たちだけが持っている技術をこれ見よがしに見せつける為。
当たらずとも遠からず。
そういうエージェントだって少なからずは。
「お嬢、こいつが!!!」
「アロガンス、ハウス!!」
ハナ姉が艦内マイクで叫ぶ。
周囲の人々には『そんなんで大人しくなるヤツが居るのかよ?!』って思ってた。
アロガンス当人も似た考えだったけども。
言われると、不思議なもので身体が勝手に食堂へと向かってた。
◇
ヴィヴィアンが戸口でアロガンスを迎え入れてから、
「何今の怖いんだけど?!」
ああ、ボクも同じ意見。
ハナ姉、怖い。
「私はバケモンじゃないよ。まあ、あれだ刷り込み教育ってヤツ」
えっと、寝てる間にCDやDVDなんかの光学記録媒体から、催眠効果ばりに意識下に記憶させるとかっていうオカルトな科学だっけ?
「オカルトは言うな! 一応は脳科学だよ」
え、でも。
アロガンス、ハウスはないよ。
「こいつは、どこかで必ず迷惑かけるから」
信用がない。
「俺はそんなに」
「信用があると思ったのか!!」
あー。
アクセル思いっきり踏み込んだの彼でした。
「ちょっと待て、マルが踏めって俺を叩くから踏み込んだ訳で。俺ばっかりが責められる謂れは」
ハナ姉は呆れてた。
ああ、そこじゃないのか。
もじもじするウナちゃんがある。
仮に信用がないとすると、手癖の悪い方の話だな、コレ。
「マルは関係ない!」
いあ、ヴィヴィアンさんの視線がボクに刺さってるんですが。
「おい、そこのワカメ女! マルは関係ない。分かってるな!!!!」
聖櫃の副総長を捕まえて、ワカメ女と恫喝する姉。
分かってた、彼女を怒らせるな。
「な!」
「分かったら、ハイだろ?」
渋々承諾したみたいだけど。
多分、後で鉄拳制裁は確実だと思う。
ヴィヴィアンさん、ごめんね。