- C 712話 共同戦線 12 -
魔法少女たちを庇って、少年らが盾となって海に、陸に降ってくる様は。
異常と言うほかない。
彼女たちも、戦場から一目散に逃げている。
背を向けた子が次々に堕とされていく訳だけども――これは、戦争ではなく一方的な虐殺だ。
って、東洋王国軍からも声が出る。
封殺されちゃうんだけど。
飛行甲板で出撃を待つ第2陣の飛行士たちがぞろりと、搭乗機から降りた。
彼らなりのボイコットなんだけど。
航空艦橋にある白服らは当然、ご立腹。
「転進する敵の旗艦を沈めねば、この戦いに真の勝利が得られぬのだぞ!!!」
とか。
威勢は良いんだけど。
マジックシールドを紙のように、すり抜けていく銃弾を浴びせるのはパイロットたちで。
現場の兵士たちである。
故郷の家に待つ、自分たちの子や妹、弟くらいの子供たちに向けて放つ銃弾。
それに耐えうる心は持ち合わせていない。
これは抗議活動である。
心から、いや良心の呵責からくる叫びなのだ。
「兵士たちの痛みが分かる」
航空団長の絞り出す声。
孫の顔が脳裏に浮かぶ。
浮かんだ孫を手に賭けるような行為を、団長に代わって兵士たちがしている。
これに心を痛めないものは居ないってことで。
でも。
それでも、白服は強硬的なマイクパフォーマンスに出た。
洗脳してある狂戦士たちが甲板にあがってきた。
整備兵や保安隊らの制止も振り切って――「元帥府の私設軍たちがどうしてもと言うのならば、それはそれでいい。軍法会議があるのならばせいぜい、諸君らの臆病風をどう言い繕えるか検討しておくといい。ただし、君たちの行動は敵前逃亡である...と、報告させてもらう」
脅迫だ。
逃走する敵勢力や、兵士を追撃しないだけ。
言い換えれば“武士の情け”である。
白服はその行為に“NO”だと突きつけた。
で。
正規に飛行士たちを甲板に置き去りにして、次々とエアクラフトらが空へ上がっていくのだ。
制空権を得て帰投する第一陣がふらふらと甲板に降り立つ。
発艦時は油圧式カタパルトで射出されるんだけども。
帰投する時は機体下部のフックにワイヤーが掛かるよう誘導してくれる。
何度も練度を積み重ねても、こればかりはなかなか。
「甲板の中央を使え! もっと真ん中へ!!!」
なんて、ヘッドセットに木霊する誘導官からのもの。
ふらふらしてるし。
当然、わざとじゃないけどアイランドの艦橋付近に接近し過ぎて、騒然となる場面もあった。
「バカ野郎が!!!」
白服の将校が吠えてた。
影からじっと睨む兵士たち。
「フライトシミュレーターも導入してやったというのに!! なにも学んでないのか...」
唾でも吐きそうな雰囲気。
彼らは彼らで、自分たちの株と威厳を喪失させてた。
もっとも戦争できればそれでいい人たちなので。
或いは死に急いでるのかも。