- C 711話 共同戦線 11 -
中欧艦隊は、旗艦シュリーフェンを中心とした軽巡2、駆逐8で再構成された追撃部隊が、かつてのリアウ諸島から北上する航路に入ってた。
これを第一分隊とし、第二分隊は、南カリマンタン島の南方・ジャワ海へ進出した。
目的は、サバ公爵領からによる“SOS”への対処だった。
公爵領は、領都の住民の脱出を請願。
守備隊の方は玉砕覚悟のようだったのだけど――「宗主国から中欧艦隊に?」ヴィネツィア連邦・大統領府からの正式な支援要請もあって、旗艦で燻ってた提督は他人の不幸に歓喜した。
で、彼は第二分隊へと座を替えたわけだ。
提督座乗艦“クックスハーフェン”装甲水上器母艦――。
全長160メートルの全通平甲板型の元軽巡洋艦である。
機関出力は4万5千馬力、水上機動力は主砲を取り除いても30ノット未満であった。
つまり、鈍い子である。
前時代の名残として舷側にはケースメイト砲が残り、総数約16門(単装式の88ミリ砲を採用)が残念ながら装甲と冠するほどの堅牢な軍艦ではなかった。
旗艦シュリーフェンの飛行艦橋にあった、飛行隊長は涙を滲ませながら。
「閣下のご期待に沿えず、不徳の致す所存でありました」
とか、泣き落としを見せる。
勿論、高性能な目薬の御蔭であるのだけど。
提督は気をよくして...
「貴殿の態度にはいちいち棘があり、儂の寛大な心は傷ついたものだが。よいよい、赦してやろうアレは忠臣なる部下の諫言であったと記録しておいてやる」
とか。
応酬である。
両人とも、本心から赦す気などさらさらない。
伝声管のひとつから...
「よくもまあ、そんな嘘を」
操艦ブリッジからのもの。
声は艦長からだけど。
「これで、バカ提督の顔色を窺わなくて済む」
提督が当艦から降りた後のことだ。
ウォルフ・スノーからのお飾りな提督だったわけだが。
結果的に、元来の起動戦力が半減するという厄介しか、爪痕を残さなかった――とはいえ、住民の避難支援であるなら...聯合艦隊としての面目こそは保たれるというか。
王国から参加した水上器母艦が旗艦となったことだし。
「それな」
「なんだ、歯切れの悪い」
ひとつ下の階に陣取ってた提督と幕僚らの置き土産を、下士官らが必死に掃除中である。
よくもまあ、汚してくれたものだ――ウイッチたちのブリーフィングルームを。
「ウォルフ・スノーからの派遣艦は水上器母艦が2、軽巡3で駆逐4。どれも癖のある旧式のせいで、こちらの機動力がだいぶ損なわれた...はっきり言って、支援要請に応えられる様な」
伝声管越しの会話。
見えないにしても、飛行隊長の嘲笑する顔が目に浮かぶ。
あれは、かの提督を相当に嫌っていたから。
「じゃ、せいぜい頑張って貰おう!!」
なんて。
◆
待ち構える、東洋艦隊は元帥府の虎の子だった。
欧州連合が大陸で試験飛行させた、エアークラフト、つまり飛行機を積む航空母艦の群れ。
急ピッチで巡洋艦から改修されたものでも、6隻。
戦艦からは4隻がリビルドされ、南カリマンタン島の東部方面の空を支配下に置いてた。
従来の水上器母艦とともに航空戦力は、絶大だったのだ。
ちょっとご愁傷様というか...
ごめん...