- C 710話 共同戦線 10 -
「台州での懸念って何?」
エサ子に質問されたので、振り向くと。
まだ何か食ってるんだよね、この子。
聞けば、魔獣の肉を干し肉にしてたらしく――これは、ハナ姉と一緒に狩りに行って、仕留めた...えっと、頭が鶏で身体が...獅子、いや虎だっけ。で、尻尾がガラガラヘビとかいうヤバいのケモノだったらしく。美味そうだと思って狩ってきたもんが余ってるんだとか。
いやあ、余ってるからって...
なに? 塩漬けに。
食べないよ、そんな得体のしれないキメラ。
「なかなか噛み千切れないのが悔しいところかな」
どこの部位だよ。
いや、いい。
知りたくないから。
「えっと、かつての世界観だと、傭兵が闊歩してた。国の枠に捕らわれず、自由にそれこそ“狩り”をして......まあ海賊みたいな連中がさ。彼らはプレイヤーで、台州は主に彼らの拠点だったんだけど。この世界ではテーマパークだった雰囲気は、なく...ないよね?」
念のために確認してみる。
台州に行ったのは、前の世界だけだから。
「さあ、どうだろう?」
ヴィヴィアンも首を傾げてる。
聖櫃騎士団も、そこまで足は伸ばさなかった。
大陸戦争は苛烈を極めてたから。
わざわざ火種に突っ込むほど暇じゃないとか。
いあ、そういう訳でもないか。
「じゃ、もう...希望しか残ってないね。で、これ以上はその希望にすがりつつ、民間の施設を傍目から軍艦にも見える“湖の乙女”号......使わせてくれるかどうかに係ってる。幸い、女の子が多数乗ってるから!」
「マジか、とうとう身体を」
乳首を隠したままのアロガンスが口を挟む。
おっとその反応はなんだよ!
「ちがーう!! 泣き落とし、泣き落とし!!!!」
甘い蜜なんか、蜜なんか...
いや、いい。
考えるのやめる。
◇
再び長距離通信での会議が持たれた。
相手は魔術師と古株の聖騎士らだ。
魔術師と邂逅した時は、さほど観察できなかったように思うけど。
聖櫃騎士団と言う割には、どちらかというと。
「アルケミストの団体のようにも見えるかな?」
ボクの怪訝そうな顔から、彼が導いた答え。
図星だったからポーカーフェイスが崩れる。
「いや、出来てない」
「なにが?」
ハナ姉に口を尖らせた。
吸われそうになったので、一歩後方へ下がってた。
自己防衛である。
「ポーカーフェイス」
ええー、マジかー。
エサ子も無表情でもぐもぐ口が動いてるが、アレはアレで怖い。
「エサ子のも違うからな」
その横で嗤うウナちゃんへも、
「ウナも他人の事は言えんからな。あんたは、魔王として上に立つ者の威厳を磨け」
暫くそんなリレーを見せられてた、聖櫃。
魔術師が再び堰を切るように、会話に入る頃――“遠見の鏡”というモニターの前に、ハナ姉しか残っていなかった。
「で、こちらには今のやり取りを見せるために、わざわざ秘匿回線が開かれたと見ていいのか、それとも...」
「(深くため息が吐かれ、)ああ、うん。こっちは一度、台州に入る事にする」