- C 709話 共同戦線 9 -
「そう、選定されなかった世界。表向きはバックアップ用に遺しているって話なんだけど。公式の運用元からすると、地域だけを切り抜いて用いるには、元データが恐ろしく複雑だったという話なんだ。何せ、星をまるごと観測するために作られたモデルだからねえ~」
ヴィヴィアンの熱弁。
彼女も聖櫃だから、この辺りの事情には詳しい。
その事情というのは、社外秘であるんだけど。
どこからの情報なんだろう。
あ、いや。
「ウナちゃん?!」
「うむ」
讃えよみたいな姿勢。
カモーンって、仰ぎ見るよう仕向けてくる。
「ここが所謂、別世界って知ってたの?! いや、知ってたよね!!」
乳首をピンポイントで小突く。
これ当てられると、凄く痛いんだけど。
お仕置きです!!
「あ、はふっ」
ヤバ、外した。
「仕方のない奴だ、ここはだな」
こうやるものだと、言わんばかりにハナ姉の指が。
いや細くて長い腕が視界の端から見えた。
で、押す。
核のスイッチでも押し込むように。
ごくごく自然に......ぽちっとな。
「ぎゃあああう~」
ああ、痛かったか。
涙ちょちょぎってる。
背中から床に倒れて、ウナちゃんが悶え苦しむ様。
「あんたら、めっちゃ怖いことすんのな」
ヴィヴィアンもだが、アロガンスにエサ子まで乳首を隠す仕草。
海図を見せてくれた士官も――乳首を両腕で隠している。
「そこまで見境なくしないよ!!!」
「信じられるか!」
乳首のダイレクトヒットは痛いんだぞって吠えられた。
知ってるよ。
どっちかというと、義姉にやられる側なんだし。
◇
話が反れたけど。
魔界からこちら側へ渡るときから、ほぼ異世界転移したようなものだという。
この世界は、第3シーズン時の世界観を継続しているのだとか。
表の運用サイドでは、第7シーズンの佳境とのことらしく。
マナ鉱石が不正に流用してた事件も、表向き解決しているとのこと。
「マジで?!」
言ってなかったっけみたいな、反応がウナちゃんから齎される。
いや、言われてもねえよ。
その前に、さ。
ボクの生爪剥がしたりとか、してたじゃんよ。
「ウナ坊、ちょっと来い」
ハナ姉に知られた。
魔王たる威厳もなく、ノラ猫でも捕まえたように。
首根っこで吊られる人を初めて見たような。
おお、人ってああやって運ばれるのもあるんだ。
「うちの妹に何してくれてんだ?」
「あ、いや...それは、その...調査の一環というか」
発令所じゃなくて良かった。
見ている人はごくごく限られる。
大の大人が怒られるのは、恥ずかしいことだけど――ああ、泣いちゃったよ。あ、いや、壁ドンの迫り方が怖いなあ。何気なくアロガンスに視線を向けると、ふるふる首が横に振られてて...あたかも自身と重ねているような。
あんたは、何もしてないだろ。
いあ、もしや売ったんか?!
「アロガンス!!?」
「い、いえ、ち、ちがいまーす!!!」
だよね。
あん時、いなかったもんね。