- C 708話 共同戦線 8 -
さて共犯関係のおさらい。
「東洋を横断して、魔術師さんと合流するとして。やっぱりこのままでは不味いよね」
ボクらが壊しておいて言うのも。
「確かに。諸君らが体当たりしてこなければ、潜るという選択肢があった。その通りである...が、それなりの港湾施設が必要なのも事実で、喪失した事柄に今更嘆いたとこで...」
割り切っていこうって姿勢は実に清々しいんだけど。
海図を見させてもらう。
ライトテーブルの上を指の腹でなぞりながら、
すっと北の辺りを小突いてみた。
ハナ姉も、意図が分かったようで。
「少し遠回りになるかも知れぬ」
少しどころか相当かも知れない。
そして、東洋の膝元に近いという立地も、ここは目を瞑るとして。
「なにか?」
「台州に寄ってはどうだろう?!!!」
◇
航海図に走る線の数々。
どこをどう通るかで悩む、行先は“台州”でいい。
傀儡・燕王国が出来てからは、かつての栄華は見られないとの話だけども。
巨大な港湾施設は健在であるし、あれは民間の施設だ。
誰に憚る事があるかって。
いや、少々問題はあるか。
「少々?」
懸念すべきはこの船の方かも知れない。
「“湖の乙女”号が何だって?!」
「あ、そんな名前なんだ」
ちょっとかわいい響き。
ボクのころころとした笑みに、ヴィヴィアンもまんざらでもなく。
「ふふん、いいでしょう!!」
「とはいっても軍艦だよね?」
そうだ、そこ。
プレイヤーの存在があった世界でなら、傭兵が軍艦を持っていることは当たり前だった。
そういう世界だったからだが。
ボクらはそんなノラ軍艦を、一度も見ていない。
「当たり前じゃない! ここは隔絶された世界よ...えっと、魔術師がいうには...その、なんだっけ。あー、ほ、ほら...」
「パラレルワールドとか?」
ハナ姉が助け船。
いや、彼女は首を横にぶんぶん振っている。
違ったらしい。
違うって言うほど間違いではないらしく、
「剪定されなかった世界か?!」
珍しくウナちゃんが、大人に見えた。
いや、腕を組み物静かな雰囲気を漂わせる。
「そう、それ!! そこのお子様、物知りね!!!」
あ、彼女は魔王ウナ・クールといって。
「剪定?!」
ボクの思考が止まりかける。
動いてるときも、必要のないことをぐだぐだ考えてはいるけども。
ボクに囁く者あり。
――ちょっと待て、冷静になれって囁くもの
耳元でくちゃくちゃ口を鳴らす、エサ子があり。
いあ、彼女じゃないと思う。
こう、こころの...
「冷静になれ、ウナ公の本職は調査そのもだろ...」
語り掛ける声は、エサ子だった。
的確なアドバイスをありがとう。