- C 706話 共同戦線 6 -
聖櫃の総長が誘拐された事実が、とうとう明るみに。
カイザー・ヴィルトにて従事している魔術師派の幹部たちは、皆、知っている。
その対立する派閥と、総長のファンクラブ親衛隊が袂を分かつように、外出中なのだ。
「ファンクラブ親衛隊?!」
食いついたのはソコ。
我ながら、アンテナの向きが違うのは理解する。
ハナ姉からも飽きられたように、ため息を吐かれた。
エサ子は、装甲車内で昼食、採ってるみたい。
「君たちのパーティも存外、自由な子が多いのな?」
これはバカにされた。
◇
――話を戻そう。
遊興中の総長は、当初、誘拐されたものとばかり思われていた。
しかし、親衛隊によるローリング作戦による、地道な創作活動によって――同組織内にある“強硬派”という派閥の手により、元帥府に売られたというのが筋のようなのだ。元帥府における“強硬派”は“白服”と呼ばれていた。
聖騎士らの甲冑色を軍服に落とし込んだようで。
どうも、東洋軍内では同一視されているよう。
だから...
「自分たちの行動の結果じゃないのか?」
とか。
「皇族に近づくためのパフォーマンスだろ?」
なんて言葉が返ってきたのだという。
ファンクラブ親衛隊の怒りは、保護者を表明してた魔術師に向けられた。
当然と言えば、当然だろう。
「――と、まあ。身動きが取れなくなった...征伐が必要なら、今が絶好のチャンスだろう。煮るなり、焼くなり好きにしてくれても構わない。が、総長、彼女だけは...赦して欲しい。本当に虫のいい話だろうが、彼女には聖櫃がテロリストだという認識がなく、とても純粋に、人々が幸せになったらいいなっていう理想があるんだ!!!」
そんなコト、聞かされたところでどうしたものか。
この場のボクらに裁量権なるもんがあるとしたら。
ちらっと、ウナちゃんを見る。
ハナ姉も彼女の肩を揉みながら、それとなく耳打ちしてる。
乳首を弄りつつ、
「マルちゃんは?!」
なぜ、こっちに振った。
「ボク、パス!」
「じゃ、じゃあ...」
アロガンスは『俺は糞してくる』って席を立った。
曰く、ずっと我慢してて『頭が見えた感じがする』なんてボヤいてた。
とうとう意見の出口が見えなくなったところで――魔獣肉を串焼きしてた、エサ子が戻ってきた。
装甲車の調理場でボヤ騒ぎを起こし、コロネさんらから追い出されたようで。
「ちょっと焦がしただけなのに」
反省の色は無し。
「はい、エサ子さん!」
ウナちゃんからのキラーパス。
事情の分からん子に振っちゃダメ!!!
「うーん... 獣王なら弱ってるヤツと喧嘩するのは、卑怯者のスルことで。それは面白くないことだっていうよ。だから、困ってるってんなら全力で手を貸して...後腐れ無しの状態に戻すのがスジかなあ。やっぱさあ、喧嘩ってガチなりサシなりって、互いに必死じゃなきゃ面白くないんじゃない?」
ふむ、脳筋な答えをありがとう。
これはこれで方針としちゃあ、まともか。
第二魔王領の暴れん坊将軍こと、獣王さまの教えに救われたか。
「じゃ、エサ子さんの採用!」
あ~あ、キルダさんたちに相談しないで決めちゃったよ。