- C 705話 共同戦線 5 -
「――共同戦線?!」
コウテイ・マンタ級の操艦ブリッジにて、椅子の背でストレッチ中の“シーラビット”族ウサギちゃんは、やや上ずった声でさえずった。収容目的のシャトルの射出の為に飛行高度を一時は下げたが、結局のところキャンセルされたので。
再び、超高高度に上げてある。
操艦の指揮官としては、無駄なことをさせられたと思ってた。
「聖櫃と、ですよね?」
今、背伸びの方。
暫くしたら、肩を入れて入念に...
なんだっけ...
「うん!」
元気な声――ウナちゃんだ。
追撃者、捕獲者としての姿勢は崩していない。
けど。
「けど? なんです」
「困ってるみたいだし!!」
ウサギちゃんの首が横に振られた。
「私も困ってます、よ?」
次元が違うと一周されたわけで。
彼女にも怒らせてあげたいんだけど。
今は未だ。
◇
「共同戦線と言うのは、ボクたちにすると。魔界からくっついてきたコブたちに対して、ちょっと示しがつかない。だから提案なんだけど、ボクらは“共犯者”にならないかな?」
セイル上部にある見張りから、上空の巨鳥が砲撃し始めているって“伝声管”を通じて報告してきた。
手始めに。
ボクらの罪は、ヴィヴィアンと魔術師の合流に手を貸すという事から。
「いあ、待て。待ってくれ...理解が追い付かない」
「――つまり、手を貸してくれるのか? 総長を東洋の魔の手から救い出すと??!」
ん。
えっと、何ソレ?
「.......あ、いや。待て話を戻そう。どこまで戻ればいい?」
ボクらにも落ち着く場所が必要だ。
共同戦線というのは、
ヴィヴィアンが提案したもので。
潜水艦が潜水できなくなった為に、洋上を巡航速度で航海しなくちゃいけなくなった。
ここまでは分かる。
ボクらが体当たりしたせいだからね。
無国籍の怪しい船だからって、他国の領海内で無暗に攻撃しちゃだめよって話。この辺りはボクらが全面的に非があるので、駄々を捏ねられたら『弁償』しなくちゃならない。
ほら、彼女。
一応、サバ公爵令嬢も演じてた訳で。
面倒事になるよ、きっと。
「はあ、その手もありましたね」
やめて、おねがい。
「冗談はそこら辺に置いておきます。概ね、そんな感じで...」
魔術師の方は秘めてたもんを口に出した、バツの悪さが残る。
目が泳ぎながら、
「そうか、そうか...ああ、なるほど。それで共同、共犯関係か」
「総長さんが何かって話は」
ボクの声は届かなかったみたいだけど。
「総長さんがどうしたって?」
副総長であるヴィヴィアンのは届いた。
ぎこちないロボットダンス風に振り向き、
魔術師は深く、とにかく深く首を下げて謝りだした。
「俺が、俺が見ているなんて、大口を叩いておきながら...」
まあ、この必死さで何となくは分かった気がした。